ーcoyolyー

The Workers Cup ーW杯の裏側ーのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

The Workers Cup ーW杯の裏側ー(2017年製作の映画)
3.7
私最初、技能実習生のドキュメンタリー観てるのかと思った。こういう環境や状況ってどこに行っても一緒、まるでオリジナリティがない。人間が人間を搾取する時、普遍的にこうなるのだと痛感させられる。

ここに出てくる人のほとんどが英語を喋る。英語というのは奴隷の言語なのだなと思う。奴隷にさせられる人、させる人の間を仲介する言語。さっきまで英語を話していた彼らが私には全く解することのできないそれぞれの母語であろう言語を握りしめている電話の向こうの人と話し始めるのと同時に彼ら一人一人は人間性を回復する。

このドキュメンタリーに出てくる人のほとんどはそれなりに教養がある人たちなんだろうな、というのも英語で話している時の語彙で何となく伝わってくる(このドキュメンタリーの趣旨を理解して協力している時点で伺えることでもある)(そしてこの場所で働く人たち全体としては彼らのようではない人々の方が多いんだろうなとも想像する)。そして何人かはマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーやACミランやバルセロナのユニフォームを着てこのドキュメンタリーに登場する。それぞれの心のチームであろうユニフォームを心なしか誇らしげに纏って。それが辛い。それが奴隷である証のように見えて辛い。何の縁もゆかりもないであろう国のビッグクラブのユニフォームを誇らしげに。これぞ植民地根性だ、と私は思ってしまう。各々自分の国の代表ユニフォームをこうやって着ていたなら私が受け取るものは全く違っていただろうに。
ユニ高えんだよ。正規で買うと2万円くらいするんだよ。彼らにとってなけなしの勝負服なんだよ。それが欧州ビッグクラブのものであるのが辛い。

私もうこういう場所でこうやって勝負服としてアピールするなら堂々と胸スポンサーが「白い恋人」であるユニで見せつけてやりますわ。その精神とても大事な気がする。北海道背負ってやるよ。今その時代の持ってないけどメルカリかヤフオクか何かで敢えて「白い恋人」と漢字で書いてあるユニ探し出してやりますよ。漢字で書いてないとうちのユニのカラーリング的にACミランユニかな?って勘違いされるじゃん。だから違うって、北海道のチームのユニだってわかるように胸を張り戦いますよ。

サッカー自体は悪くない。ただサッカーは利用される。資本家にとことん利用され尽くされている。

そして建前だけは何とか取り繕おうとしている。

その様子を見ていて私はハッとして。

今の女子W杯をめぐる状況、この国においては建前すら取り繕おうとしない。「異人」が絡むと外交的にヤバいことくらいは理解しているので取り繕おうとしたり隠そうとしたり最低限のことはするんだけど、私たち女に対しては何も取り繕おうとも隠そうともせずに堂々としている。何だあれヤベェ。ヤバさがヤバすぎてヤバい。そのヤバさをまるで認識できていない日本男性ヤバい。女に対する扱いは国内の問題で外国が首突っ込んでくる類の話ではないと思っているからFIFAのご機嫌伺いすらせずに伸び伸びと踏んづけてる。外国人は「異人」だから外国が守ってくれるけど私たちは日本人で日本女性という「身内」だから国が守ってくれない。どれだけ女を虐げていても身内の問題に口出しするな、という態度が通用すると思っている。

切り口を変えると私たちはこの映画で描かれた「遠い国の奴隷として搾取される可哀想な人たち」より酷い扱いを受けている。そのことに衝撃を受けた。その酷い扱い、身内から常日頃そういうものだと押し付けられていると酷い扱いだと認識することが困難すぎることも含めてジェンダーギャップ指数125位という日本を痛感させられる。
ーcoyolyー

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