ククレ

正欲のククレのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

原作を読んでから映画を観ようと思ってたら…もう配信されてるんやね。
とても感動した!というか…ぶっ刺さった。原作も読みます。

最近、「生きづらい人たち」がテーマの邦画がとても多いんやけど、今作もたくさんの人達を「癒やす」と思うわ。いろいろな登場人物の気持ちにシンクロする人も多いんやないかな。

以下はネタバレ…
(長くなりました)









群像劇で展開して、後半に登場人物たちが繋がっていくストーリーが巧み!新垣結衣をはじめ、出演者の皆さんもとても上手い。それぞれが抱える苦しみが伝わってきて終始胸が痛かったわ…!

特に東野絢香さん!諸橋に泣きながら告白するシーンは素晴らしい!もらい泣きしたわ。これからとても楽しみな俳優さんやね。

大学の「ダイバーシティ」のダンスをマイノリティ当事者の諸橋目線で見ると…なんたる茶番。昨今の「SDGs」とか「ポリティカルコレクト」「多様性」を声高に礼賛する風潮に違和感があってん。果たしてあれで理解や共感は深まるのか?「声に出せないマイノリティ」がいるということに気付かされたわ〜。

不登校の息子のためにYouTubeチャンネルを作る母親の葛藤もよくわかるなぁ。それを理解できない検事の父親もあながち間違ってないから…お互いに苦しい。私だってあの父親の立場やったら、あんな風に苛立ってしまうと思うから。フォロワーが増えることで一時的に社会参加した気にはなるけど、作る動画の内容が「子どもの遊び」でしかないから不安になるわな。単なる「逃避行動」に見えるんやろうね。

そして、「単なる子どもの水遊び」の動画を観ても、いろんな捉え方をする人がいるんやなぁ。作る方も見る方も癒やされることがある一方で、性的な見方をする人もいる。安易に子どもが動画配信することはとても「危険」であることは間違いない。警察が動画所持者を逮捕することで、あの教師は捕まり厳罰に処されるわけやから、これでよかった。人に危害を与える「性癖」は認められない。

もちろん、佐々木と諸橋が「ただの水フェチ」であることは互いのライン履歴を見ればわかるから、二人は無罪になると思う。でも、逮捕されたことで、二人は今まで以上に「性欲」を隠して人と繋がることを避けるんやろうな…。

いわゆる「水が好き」とは違う強迫的な「水への衝動」があるんやね。
私は障がい者支援の仕事をしているのだが、ずっと水道水を触り続ける「こだわり」のある自閉症の人を何人か知ってる。止めても止めても繰り返し、水に対して凄まじい欲求がある。それに近いんやろうか?
普通の「性欲」はないのに、水が吹き出すのを見て性的に興奮するというのは…かなり苦しいんやろうね。でも、水との戯れを「美しく」表現してるから、その辺りが少しわかりにくかったわ。もっとドロドロとした「欲情」なんやないかな?

この作品の素晴らしいところは、「結局、人と繋がることで癒やされる」というメッセージやと思う。佐々木と夏月が「セックスの真似」をするシーンが秀逸で、抱き合うことで「いなくならないで」という言葉が自然に出る。これこそが「正しい欲」なんやと思った。理解し合える人と出会えた二人は、この上なく幸せやと思う。

ラストの取調室のやり取りがとても良かった。検事の「ありえないけど」の一言に夏月は憤慨して、訥々と語る。そう、夏月が佐々木を信じている気持ちは全くぶれない。その気迫が感じられた。伝えてほしかったメッセージ「いなくならないから」。この一言に全てが詰まってるなぁ…。離婚調停中の検事の表情が面白かった。

千差万別の「価値観」「こだわり」「性癖」などがあり、きっと共感してくれる人はそんなに多くない。SNSがある現代はそういった人々が繋がりやすくなってるけど、まだまだ課題だらけやな。本当の意味で「多様性」を認め合う社会はまだ先になるんやなぁ。

追記:「地球に留学に来てる」という表現…。これは名言やと思うので、どこかで使わせてもらいます〜。
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