ククレ

市子のククレのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

杉咲花が凄まじい演技。日本アカデミー賞の主演女優賞は「怪物」の安藤サクラよりもこっちの方がふさわしいのでは?と思ったくらいやわ。

でも、ストーリーは期待したほどではなかった。後半の展開があまり納得できなかった。

まだ観ていない人は、詳細を知らないまま観るほうがより楽しめるかも?予告編の印象とは違った。

以下はネタバレ…









3年同棲した彼氏からプロポーズされたあとに失踪する市子…。あきらめきれない彼氏と共に、関わってきた様々な人々の目線で「市子」の半生を見ていくことで、悲しい現実が見えてくる…ミステリー的な構成がとても面白くて引き込まれたわ〜。次第に「市子」の悲しい生育歴と犯した罪が明らかになっていく…。

でも、「無戸籍児」の「市子」が筋ジスの妹を殺して「月子」として生きる、という展開は少し無理があるかな。役所の男が偽装工作したということなんやけど、そんなにうまくいくわけないで。筋ジスの妹には主治医がいるし、珍しい進行性の病気やから様々な人が関わるはず。近所にもバレるで。現に気づいてる女の子もいたやん。別の地域に引っ越したわけでもないのに、姉が代わりに小学校に行くことはできへんやろ〜。

残念やったのは、妹「月子」の性格や障がいの重さが全く描かれてなかったこと。母は「どうしようもなかった」と言ってたけど、家族が月子を養育することにどれほどの「苦悩」かあったのかを見せてくれないと…。幸せだった頃の描写もほとんどなくて、あの写真くらいしか残ってないやんけ。
果たして市子は妹に対して愛情があったのか?そして妹は姉を慕っていたのか?そこは重要やと思うで。二人の関係性もわからんまま、呼吸器を外して殺してしまうシーンを見せられるから、市子の無表情の意味が伝わらない。ただのサイコパスに見えてもうたわ。「介護疲れ」ではなく、月子の戸籍を奪うために殺しただけのことやろ。

結局、内縁の父親も刺し殺してしまう。その死体遺棄を北くんに押し付けて逃げる。ん?コイツやっぱりヤバいぞ…?もしかして、北くんが見てるのを知っていて巻き込んだとしたら…!
だって、ラストではあんなに支えてくれた北くんを、自殺志願者の女性もろとも車を沈めて殺してしまってるやん。自殺志願者の女性と連絡を取って「戸籍乗っ取り」するつもりやったんやろな。鼻歌うたいながらエンドロールになるけど…コイツを野放しにするな〜!また誰かが犠牲になるで!長谷川くん逃げて〜!

「無戸籍児」であることは本当に悲惨やし、生きるために人を利用したり嘘で塗り固めることは仕方ないと思う。でも、市子には共感できない。市子と関わる男性はみんな魅了されて狂わされてるんやで!大雨で空を見て笑うシーンや、焼きそばをかわいく食べるシーンには「男性を意識したあざとさ」を感じた。市子は、常に誰かに守られ助けてもらいながら流されるように生きてきたんやね。子どもの頃の「たまごっち万引き」でもわかるけど、もともと倫理観は欠如してたんやろうね。だから、ヤバくなったら殺して逃げる…!

なんか、思ってたのと違ったわ。「無戸籍児がテーマのヒューマンドラマ」ではなく、「シリアルキラー誕生のサスペンス」では…?
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