ククレ

ある男のククレのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

昨年の日本アカデミー賞をたくさん受賞してたから期待してた。でも、ちょっと物足りなかったなぁ。途中までは引き込まれたんやけど、もっと踏み込んでほしかった、というか…。
どうしても邦画の名作「砂の器」を思い出してしまった。比べてしまうのはいけないけど…
なんかいろいろと中途半端に感じたわ。

以下はネタバレ…。








先日観た邦画も「他人の戸籍で別人になる」というストーリーやった。最近流行ってるんかな?窪田正孝がとても上手くて、死刑囚の父親のせいで苦しんだ辛い過去を捨てて、もがきながら生きている哀しみが伝わってきた。

でも、2回の「戸籍交換」をしたのに、彼だけを掘り下げて描いていたのはアカンなあ。今作は「戸籍乗っ取り」ではなく「交換」なんやから、双方の人生を見せてほしかった。
仲野太賀演じる「谷口」は、老舗温泉の兄貴がいけ好かない奴だからいろんな葛藤があったはず。元カノとの関係性も興味深かったから、「なぜ失踪したのか、どんな生活をしてきたのか」を知りたかったわ。喫茶店のシーンでセリフもなく終わることが残念やった。
もう一人の「曾根崎」なんて名前しか出てへんやん。原作通りにするなら必要なのかもしれへんけど、どんな人か全く触れないならいっそのこと端折ってもよかったのでは?

でも、弁護士の城戸のことは掘り下げるんやね。「在日」である自身のアイデンティティに悩んでるけど描写が浅いなぁ。小見浦に「在日みたいな顔」って言われたり、ヘイトスピーチのニュース映像見たり…中途半端やわ。ラストで奥さんが浮気してることがわかり、バーで知らん人と喋るとき、「子どもは4歳と13歳」とか言うてて、明らかに「別人」になりたがってる。あの意味深なマグリットの絵も相まって何とも言えない怪しい感じで終わるけど…そこはどーでもええわ。

誰しも、自身の境遇に嫌気が差して「全くの別人に代わってしまいたい」という気持ちになることはある。でも、実際に「戸籍交換」までして「人生丸ごと」変えてしまうというのは、並大抵の「絶望」ではないはず…。城戸が「彼らに感化されて悶々としました」と言われても、「同列にすんなよ」と思ってしまった。そんなエンディングよりも、「谷口」のその後の人生を見たかったなぁ…。
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