10円様

西部戦線異状なしの10円様のレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.7
 戦争における人道とは何なのだろう。
 非人道兵器に挙げられるもの「核爆弾」「焼夷弾」「毒ガス」等。それらを使わずに銃や戦車で人を撃ち、剣で斬り合えばそれは人道的なのでしょうか…
 
 原作はヴァイマル共和国のエーリヒマリアレマルクが1929年に発表したもので、その僅か1年後にユニバーサルが最初の映画化をしています。監督はルイスマイルストン。つまりアメリカがドイツが舞台の映画を作ったんですよね。
 ただドイツ人を演じる俳優はみんなアメリカ人です。そこは国際情勢とかの関係があるのかな?とはいえ一次大戦で敵国だったドイツの原作を映画化するとは、よほど当時の反戦思想を投影させたものだったのでしょう。この頃の戦争映画はプロパガンダ映画が多いのですが、こういう作品が映画が評価されるというのは、ある意味革命的とも呼べるかもしれません。

 そして本作。「再映画化」と呼ぶにしても「リメイク」と呼ぶにしても実に90年ぶりです。1930年の映画は当時の技術でも戦争シーンがとてもリアルに描かれていました。それを更に生々しく描写しています。正直痛いんですよ…うわっ…ってなったり、目を背けたり…例えばヘルメットで殴りまくると人の顔が陥没していったり、銃が無いとナタで斬る、というか叩きまくる。しかも一斬りでは相手も死ななくて苦しんでる。戦車に轢かれて圧死、火炎放射でもがき苦しむ、戦闘中に精神が病む、自軍の兵を殺してしまう。と言った、あるだろうな…というシーンの連続で、戦闘シーンに勇敢さは無いんです。人間の弱い部分だけがあります。鑑賞していて鬱々とした気持ちになりました💦

 90年前の映画って、序盤でけっこう尺を使って、若者達が血気さかんに戦争に行きたがるシーンがあるんですよね。そして配属されてみれば、近所のいけすかないオヤジが上官として配属されていたり、戦時中の若者の心理や兵隊不足による「誰でも良いや徴兵」がここで描かれていて、兵隊とは駒である。という事がとても上手く伝わってきたんですが、本作はかなり控えられていました。ちょっと残念かなぁと思いましたが、作品全体の雰囲気や性格を考えると、まあ有りかもしれません。

 戦争をしているのは一部の指導者…

 それに抗えない兵士…

 悲しくなるよね🥲

 あれだけ敵国の兵隊を殺すぞ!早く戦闘したいぜ!って言ってたのに、戦争が終わると歓喜する。そりゃそうだ。戦争なんて遥か昔から存在するけど、人間は戦争なんてやりたくないんだ。

 ちなみに第1次大戦のあとにそこらに散らばった銃弾を見ると、約9割の弾丸は人に当たらなかったという事が判明してるらしいです。
 これは兵士は心理的に的を避けて引き金を引いていたという事らしいです。
 それが人間だよね、普通は。
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