ミチ

aftersun/アフターサンのミチのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
父と娘が過ごした、ある夏のお話。


本作は、ある女性が20年前に父親と過ごした夏の思い出を、ビデオテープを観て振り返るという形で進む。

女性の現在についてはほとんど描かれないのだが、その夏が「過去である」という事実が作品全体を包みこみ、美しい思い出であるはずなのに、ずっと不安で、ずっと苦しかった。


離れて暮らす父と娘の関係は一見するとうまくいっていて、2人で過ごす夏を満喫しているように見える。

しかし言葉の奥に、表情の奥に、良い父親であろうとする、良い娘であろうとする互いの葛藤が見え隠れする。

そしてそれは、振り返っている今だからわかることなのだ。


監督はそれを、なんの説明もせずに美しい音と絵で綴る。

2人の間にある空気。止まない音。リフレクション。

それらが私たちの奥深くにまで浸透し、治りきらない瘡蓋にしみてくるようだった。


余白の多い作品ではあるが、父娘の行く末に思いを馳せるよりは、そのまま受け取って、そのまましまっておきたいと思える作品だった。
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