B5版

ファイブ・デビルズのB5版のレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
4.2
オンライン試写会様にて。
これはすごかったわ…今年見た中で1.2争う良作!
理解の範疇にない強烈な感情を、理性が干渉し得ない方面からぶん殴られたような、強烈な作品。

フランスの片田舎に住む娘ヴィッキーは母親ジョアンヌが大好き。
嗅覚が優れている彼女は母に関するものをサンプリングして瓶詰めする趣味がある。
そんな仲の良い親子の前に、ある日突然10年近く不通だった義妹が現れる。
ヴィッキーが義妹を探る過程で目覚めた不思議な力は、過去に母に起こった事件の片鱗を徐々に暴き出すが…

舞台はフランスの片田舎、まずこの大自然の撮り方に惹かれる。
美しくのどかで観光写真としてまず映えるだろう風景はどこかよそよそしくて、息詰まるような窮屈さを醸している。
また音響もサスペンスホラーらしい重低音が要所要所で不安の残滓のように作品に寄り添い、心許なさを増幅していく。

本作の登場人物達の感情の複雑さとその総量には眩暈がするほどだ。
ままならない人間と人間の体当たりのドラマというだけでも、本作は最小限の説明で上手に、濃厚に描いていると思う。
特に娘ヴィッキーのまるで恋の如く母に執着する序盤から、過去へのタイムリープを経て変化する母親へのまなざしの遷り変わり描写と演技力は素晴らしい。

本作、主題に流れるのは愛である。
幼児の無邪気と引き換えの観念的な愛、絶望、喪失一連の成長譚。
そして伴奏として物語に副次的に見え隠れする禍々しい愛。
感動と寒気、極端な感情が天秤で揺れ動く終盤にやっと一息訪れた後のラストの衝撃は凄まじかった。
これは再鑑賞と、パンフレット必須の映画ですね!
B5版

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