great兄やん

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

4.3
【一言で言うと】
「恋する“偽善者”たち」

[あらすじ]
急速な西洋化と経済発展が進む1990年代前半の台北。企業を経営するモーリーは、自分の会社の経営状況も、婚約者アキンとの仲も上手くいかずにいる。一方モーリーの会社で働く親友チチは、モーリーの仕事ぶりに振り回され、恋人ミンとはケンカが絶えないのであった...。

恋なんてめんどくせぇ。大人もめんどくせぇ。そんな気分にさせる映画はもっともっとめんどくせぇ。でも、そんな“煩わしさ”が逆に愛おしくなってくる。…こんな複雑怪奇すぎる感情に苛まれることが、どれほど幸福で自由な“悲痛”であるかがグサリと突き刺さってきた。ある意味“面倒臭い”の一言では片付けられない“贅沢な”愛おしさに触れることができる129分間だった。
やっぱり、こういう恋愛劇は拗れた分だけ面白くなるものですね😌...

とにかく各々のキャラクターが絶妙に個性的なのが良い。正直言って共感等などの同情は一切できない上に所狭しと喋りまくるキャラクターしか居なかったが笑、それでも人間臭さと拗れたうざったい愛嬌が迸(ほとばし)るキャラであるのも間違いなかったですし、案外個人的には嫌いではなかったです😁

それになんと言ってもエドワード・ヤン屈指の才能とも言える撮影技法の卓越さ、特に明と暗のコントラストをあそこまでフォトジェニックに表現できるあの手腕はまさに格別としか言えない。チチとモーリーがプールサイドで“シガレット・キス”をするシーンなんかもうセンスの塊でしかないだろあんなの(・・;)...

ただまぁ全体的にトレンディ色満載な世界観なので若干あのギラギラした喧騒に付いていけなさを感じてしまったが、あの“もう二度と戻れない”ような煌びやかさとノスタルジックを味わうという意味では、この令和においてかなり貴重な体験だったのではないかと思う。
急成長を遂げた街で“発展途上”の恋を繰り広げる人たち...この相反した状況がなんとも素敵で芳醇な光景だと感じましたね😌

とにかく艶やかで未熟で美しい、“恋愛”と呼ぶには淫らで泥沼な形ではあったが、それ故不器用な生き様が濃く、そしてコミカルに描かれた、まさに大人ならではの危険な恋模様が妖しく光る一本でした。

ストーリーとしては淡々と紡がれてゆく恋愛劇といった印象ではあったが、一度崩壊を迎えた男女が迎えた者同士で修復し合い徐々に元に戻っていく展開が丁寧かつ見事でしたし、ラストシーンなんかはベタではありつつもあの締めくくりはまさに秀逸と言っても良いほど。

恋愛は嘘や秘密を成熟させて、人を未熟にさせるものだし、大人になればなるほど自身の“エゴ”を曝け出して、本当のことが言えないまま強がった“フリ”をし続ける生き物だと思います。なんというかまぁ…めんどくさいっスよね、大人って😅