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ホワイト・ドッグのHKのレビュー・感想・評価

ホワイト・ドッグ(1981年製作の映画)
3.7
先日観た犬の映画のタイトルが『ホワイト・ゴッド』。
で、今回観た犬の映画は『ホワイト・ドッグ』。
今さらながら“GOD”(神)をひっくり返すと“DOG”(犬)になると気づきました。
この2本に直接関係は無いようですが共通点はあります。ホワイトとは白人のこと。

『ホワイト・ゴッド』はファミリー動物路線と油断させてまさかの動物パニック映画(?)でしたが、『ホワイト・ドッグ』はB級の動物パニックかホラー(このジャケ写だし)だと思ったら人種差別問題を孕んだ実話ベースの社会派ドラマでした。
ホワイト・ドッグとは単に白い犬ではなく、白人により黒人を襲うよう調教された犬のこと。

監督は母国アメリカよりフランスでゴダールやトリュフォーらヌーヴェル・ヴァーグの作家に支持されたサミュエル・フラー(『拾った女』『ショック集団』)。
脚本はフラーとカーティス・ハンソン(『L.A.コンフィデンシャル』『サイレント・パートナー』)。
不穏な音楽はエンニオ・モリコーネ。

アメリカでは公開直後に上映禁止となり、それが今でも続いているとか。
今では全く過激な映像表現でもないのに、いまだに禁止ということは、過激なのは映像ではなく描かれた事実なのでしょう。劇中でホワイト・ドッグの調教方法が語られるため、米国内でそれをマネする輩が出ることを危惧しての上映禁止ということでしょうか。

主演はなんと当時アイドルだったクリスティ・マクニコル(『リトル・ダーリング』)。
昔よく「スクリーン」や「ロードショー」の表紙を飾ってましたが、本作になぜ出たの?
黒人調教師役にポール・ウィンフィールド(『ST/カーンの逆襲』『ターミネーター』)。
調教施設長にバール・アイヴズ(『大いなる西部』)。

実はこのストーリー、原作者ロマン・ギャリーの恋人だったジーン・セバーグが車で撥ねて手当のため連れ帰った犬が“ホワイト・ドッグ”だったという体験談がベースだそうです。
なるほど主人公は女優で恋人は脚本家という設定でした。事実は小説より奇なり?
R2-D2の写真に向かってダーツの矢を投げるシーンは笑えました。

ラストがイマイチ釈然としませんでしたが、少し調べて映画とは違う原作のラストを知るとさらに深い闇が・・・え、調教された犬を治そうとしたのではなかったの?
アメリカで本作の差別論争が起こり、失意のフラーはこの後フランスに渡ったそうです。
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