アカバネ

俺達に墓はないのアカバネのレビュー・感想・評価

俺達に墓はない(1979年製作の映画)
4.0
いつもとは違うタイプの松田優作アクション映画。

本作は'79年に公開された松田優作主演のアクション映画ということで、時期的には「遊戯」シリーズや『蘇える金狼』に出演していた頃になり、一年後にあたる'80年には『野獣死すべし』にも出演している。
上記の三つの映画において、多少の違いはあれども松田は孤高のアウトローを演じた。それに男なら憧れるようなカリスマ性も備えている。

それらを踏まえたうえで本作を観ると、本作が「松田優作主演のアクション映画」として如何に変わったものかが分かる。
主人公の島勝男という男は、やっていることは松田優作がこれまで演じてきたキャラクター同様、犯罪者であることに違いない。だがそこには『蘇える金狼』の朝倉が抱えた体制への反骨心、「遊戯」シリーズの鳴海から漂うプロフェッショナルさと愛らしいキャラ、『野獣死すべし』の伊達から感じる狂気とカリスマ性は無い。本作の島は、あくまで一人の「犯罪者」に過ぎないのだ。

そんな彼と組んで犯罪を行うのが岩城滉一演じるヒコという人物。彼は島を「兄貴」と慕う弟分であると同時に、いつまでも自分が「弟分」としてしか扱われないことに対する不満も密かに抱えている面白い人物でもある。
この心理によって、物語は島とヒロ、そして中盤から加わる志賀勝演じる滝田(真っ赤な服装が面白い)の三人による6千万円を巡ったバトルロワイヤル的展開となる。更には先程記述したヒロの心境も相まって「かつての仲間同士が殺し合う」という展開をよりエモーショナルにしている。

引きの画で映すとやけに迫力の無いカーチェイスなど、他の松田優作が主演している映画と比べると物足りなさを感じなくもない。しかし先程記述したエモーショナルな展開が、数多くの彼の主演作の中でも本作が際立つオリジナリティとなっている。

特別秀でた要素がある映画というわけではないが、他の作品との比較によって独特の面白さを感じられる映画である。
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