アカバネ

ゾンゲリアのアカバネのレビュー・感想・評価

ゾンゲリア(1981年製作の映画)
4.2
現代以前のゾンビ。

本作の特徴として一番に挙げられるのは、ゾンビの描かれ方にあると言えるだろう。
かつて’68年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にて、ロメロは現代ゾンビ映画の基盤を築いた。しかし、そこで描かれたのはあくまで”現代的なゾンビ”なのであって、それ以前にも「ゾンビ」という存在は知られており、それはゴシックホラーなどの映画にも登場していた。
ではロメロが描く以前のゾンビは一体どのような存在だったのか。ザックリ言うならば、ブードゥー教の「ゾンビパウダー」というアイテムによって仮死状態にさせられた、もしくは蘇った死体の奴隷というのがロメロ以前、言い換えるならば”現代以前のゾンビ”であった...と思う。
「奴隷」と示した通り、その時代のゾンビには個々が人間を襲い仲間を増やすといった習性は存在せず、主人の命令に従う存在でしかなかったのだ。

それを当てはめれば、本作は「ゾンビ映画」という枠組みに入りながらも、ロメロがつくり上げた型には全く当てはまらないというのは言うまでもないだろう。どちらかと言えば先程記述した”現代以前のゾンビ”の方に近い。もちろん本作に登場するゾンビも人間を襲って仲間を増やすが、それはあくまで主人的存在である人物の思想に基づいた行動なのであって、決してロメロタイプのゾンビと同じというわけではない。
また、これは作品内のゴア描写にも影響を及ぼしている。ゾンビが野性的な行動をしないからこそ、ゴア描写においては『サンゲリア』や『死霊のえじき』のように血がビュービュー出たり臓器が零れ落ちたりすることがないのが特徴的だ。ただその代わりと言っちゃナンだが、人間を生きたまま燃やしたり鼻から酸を注入したり顔面に大きな石を落とすといった、「知能をもったゾンビ」ならではの残酷アクションがスタン・ウィンストンの手掛けた見事な特殊撮メイクと共に描かれているのが素晴らしい。

そんなこんなで現代以前のゾンビが描かれているワケだが、本作はロメロがつくり上げた基盤が世間にまで浸透した後に製作された映画であるため、描かれているのは古典的な内容なのにも関わらず、観ていて「懐かしい」というよりは新鮮な感覚に陥ってしまうのも大変面白い作品である。
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