ゆりな

それでも私は生きていくのゆりなのレビュー・感想・評価

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)
3.7
主人公の表情は読み取れるのだけど、日本の小説のように感情や思ったことが行動からも読み取りにくいので、凪のような静かな映画。
フランス映画らしさ満点だが、どこか江國香織の小説らしさもあり、35mmフィルムで撮られたパリの暮らしや風景が素朴ながらいい。

ナチュラルで飾りっ気がなく、いつもの華やかさもない、等身大の女性を演じているレア・セドゥもいい。
派手になりそうな柄物もワンピースもシレッと着こなしていて、少女のようなファッションも良かった。

物語は「シングルマザー」のほんと一年とか点で切り取った、人生の話。
介護していた父は入院しボケも進む、離婚した母親は新しい旦那と上手くいっててまるで興味がなさそう、娘は可愛い、そして5年前に夫は亡くなり新しい訪れた恋は妻子持ちの旧友。

好きそうだけど、めちゃくちゃのめり込む恋でもないのか?と思いきや突然の涙を流したり、あぁもっと主人公の心情が見たいよ!と思ったけど野暮だよね。

山崎まどかさんの「どんなに辛い話でも、ミア・ハンセン=ラブの映画は光を内包している。 小さな希望をステップにしながら、日々を重ねていく。
そんな普通の女性の困難を描いたこの作品で、今まで一番柔らかくて優しい レア・セドゥに会えた。それだけで救われた気がした。」というコメントの通り。

フィルムで撮られてるせいか「ロメール映画を思わせる」と公式でも紹介があったけれど、やっぱり時代設定が違いすぎるせいか、そうは見えず。
ただポストカードのような素朴ながら美しくて、そこにスッと入り込む"今回は"素朴なレア・セドゥが良かったし、こんなゆったりとした映画が世界的に評価されているのもなんだか嬉しかった。

以下ネタバレ


終盤が意外というか。不倫ものは絶対くっつかないだろうと思いきやくっつき、季節が過ぎ去り、父のボケが進んだことを受け入れてる会話の流れも笑顔もよかった。
割と終始明るくはない、決して浮かれた映画でなかったからこそ、最後のハッピーエンド感に心が救われた。
ゆりな

ゆりな