ホイットモア大統領

ゴジラ-1.0のホイットモア大統領のネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ゴジラが目覚める、大統領も目覚める。

大前提として、俺は好き。
でも、賛否両論になるのもわかる。それに関して持論を記したい。

自身が言うように本作は、
『ジュブナイル』『Returner リターナー』でボンクラ的エンタメSFを、
『ALWAYS』シリーズで昭和の風景を、
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』『アルキメデスの大戦』で戦艦と戦闘機を、
『永遠の0』『海賊と呼ばれた男』で戦中〜戦後を描いてきた、
山崎貴監督の(良い意味でも悪い意味でも)集大成であることに異論はない。

と同時に、『ジョーズ』『太陽の帝国』『ジュラシック・パーク』『宇宙戦争』等々…がわかりやすく散りばめられたスピルバーグ作品の集大成でもあった笑

さらには、序盤のゴジラや足元から映すシーンなんかはエメリッヒ版ぽいし、その繋がりからか、銀座崩壊と爆風を横の隙間で回避するシーン、クライマックスに主人公と主要部隊が別行動で攻める展開なんかは『インデペンデンス・デイ』だ!
何なら同じトラウマを抱えた飛行機乗りとして、前半腑抜け、後半復讐鬼と化す神木君がラッセル・ケイスと重なったよ。特攻という意味でもね…

個人的には、組織(政府や企業)から見放された人々、海底からの水圧と浮上や海面に上半身を出す怪物、といった演出から『リバイアサン』も感じたわけで。

とまあ、つまり盛り沢山なわけである笑

個人的に特撮作品で大事だと思うのは、バランス。
観客は怪獣を見たいわけだけど、見せ過ぎても慣れ/飽きてしまうし、かと言って見せなさ過ぎてもダレてしまう…

過去のゴジラ作品の登場人物たちの多くは新聞記者や科学者たちで、内省的な人間ドラマよりは国(政府)が展開する作戦への関与がメインであり、傑作はこの辺のバランスが良かったのだと思う。
しかし本作では、上記の盛り具合に加えてそれが一個人へスポットが当たっている(ここが『宇宙戦争』ぽい)、かつ上映時間125分のため、どうしたって説明台詞と不自然な暗転が多くなり、結果として浮いてしまっていたように感じた。

ぶっちゃけ1番大事な橘さんとの和解や心変わりが、あんな非道な手段使ったにも関わらず省かれてしまってるのもね笑

とはいえ改めてになりますが、本作好きなんですよ俺笑

あの『シン・ゴジラ』の次と考えればよくやったと思うし、政治劇を描いた『シン〜』に対して、一般市民にスポットを当てて描くのは妥当。“盛り” も70周年 × 30作目記念のお祭りとして考えれば全然許しちゃう!笑
山崎監督て、自分の好きを隠すこと無く堂々と取り入れる、そんな子供心を忘れてない屈託さが良いところでも悪いところでもある気がする。

そんな “好き” が炸裂するゴジラの登場シーン全ての力の入れようは尋常ではなく、あのテーマ曲が流れるタイミング、クライマックスの作戦含め総じて最高!
そんな怪獣映画としての面白さはもちろん、とてつもない威力の熱戦やあの “目” からは恐怖や絶望がひしひしと伝わり、予告にあった神木君の慟哭と後半の “目” に納得。

問題が山積みである現代の日本に対して、戦後 ≒ アフター・コロナとして国民自らがそれに対処するという点では、令和の時代に公開させる意義もあり、ゴジラも戦争の被害者よりはどちらかというと、厄災/自然の脅威に近い描かれ方なのはそのせいなのかなと。

ゴジラが通ると深海魚が浮いてくるとか、熱線は自身にもダメージがあって連発できない、撃つと黒い雨が降る、等の放射能の描かれ方も、当時の技術レベルと民間でできる範囲での作戦も良い。
フロンガスの泡も特攻も、1作目のオキシジェン・デストロイヤーへのオマージュでもあると思うけど、わざとらしさがなかったのが好印象。

登場人物の中では浜辺美波さんがあの時代にしっかりマッチしていて、高飛車な感じに始まり、彼女でも妻でもない存在を背中で語る姿がとても良かったです。何なら作中、ゴジラよりタフだったんじゃない?笑
安藤サクラさんがもたらす安定感も半端ない。何だかんだあの人と橘さんが1番良い人。屋台でおでんも食いてえ。

ちなみに、観る前までは、“秘密裏に再建されていた大和 or 3番艦が、同じく戦争を象徴するゴジラと『バトルシップ』展開で激突し、若者に未来を託しつつ共倒れして戦争を終結させる” if ストーリーを考えていたけど、あながち当たらずとも遠からず笑

盛りに盛る手法の先輩『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』を参考にして、次回作は、“再生したゴジラ vs. 宇宙空間まで到達した肉片が再生したスペース・ゴジラ vs. ゴジラを利用して変に復興した近未来日本” をやろうよ。そろそろ対決ものが見たいよ!

惜しむらくはラスト。
あの展開は流石にあざとくご都合主義が過ぎるし、“再生” も、そういうのをやるのはB級ホラー映画のノリだから作品の価値を下げしてしまってる気がして、俺はナシ派。

全然関係ないけど、クライマックスのゴジラ、海面に垂直に出てたけど相模湾はかなり深いわけで。てことは足ばたつかせて浮いてたのかな?だとしたら可愛いなおい笑