磔刑

ゴジラ-1.0の磔刑のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
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☆0.0
オススメ度☆☆☆
ゴジラの“ブランド”だけ見るならそれなりには満足できるんじゃないですか?
人間ドラマはかなりウジウジしててダルいのでデートやファミリー向きじゃないです。エンタメ度は低いです。
“映画”としての完成度はイマイチなので、“ゴジラ”として割り切るなら暇つぶしにはなるんじゃないですか?ゴジラ出てくる総尺体感10分ぐらいですけど。
<以下ブチギレ☆ネタバレあり>










クソ映画です。

クソな点は大きく2つ。映画としてとゴジラとしてがあります。
ゴジラとしては大した問題ではないので後述するとして、映画としてはトンデモないチャブ台返しをしているので論外です。

それは典子が生きている点に尽きます。
本当に劇場で呆気に取られて、エンドロール中ため息が止まりませんでした。

今作のゴジラは明らかに原爆のメタファーです。というかメタファーを通り越して、原爆そのものです。
つまりゴジラの被害者は原爆の被害者なのです。ならなぜ生きているのか。
原爆の被害者が死亡してたと思わせて、生きていることなんてありえません。戦時下でそんな都合のいい奇跡は起きません。
戦争がいかに無慈悲で冷酷かをクドクドと語っていたのに、死んだと思ってた人物が生きてた?は?お前はいったい何の話をしているんだ?そんな80年代のマッチョムービーみたいな馬鹿展開したいなら、原爆のメタファーだとか左翼的な思想、政治批判なんてしなければいいじゃない。深いテーマ、重いストーリーをウジウジウダウダ長ったらしく描いて、爆風に吹き飛ばされた人間が生きてる????それで戦争の悲痛さが本当に伝わると思っているのか?
観てないけど同監督の『ドラクエ』の映画がトンデモ展開で炎上したけど、多分今作も同じことしてると私は思いました。
生の重さ、死の悲惨さが“都合よく生きてる”だけで台無しです。それで原爆のメタファーとは恐れ入る。

もちろん典子が生きてたのは何らかの理由がありそうだが、それは次作のおたのしみ!みないなのも観客を舐めてる。
初代ゴジラのリスペクトなら一作で完結しろ。今作で語られない理由なら理由が無いのと同義。

敷島が最後まで好感が持てなかったのもキツかった。
PTSDにしても終始ウジウジし過ぎ。人間的に全く成長しないの何なの?更に典子と長年共同生活してて二人の関係性が全く強固な物にならず、不毛な時間が過ぎてるようにしか思えない。二人の関係性にドラマティックな要素が無さ過ぎて、ほぼ全ての部分が茶番に見えた。
典子の自己犠牲は原爆のメタとしてはドラマティックだが、敷島に救うだけの価値を感じさせないので感動半減。せめてプロポーズをしようとした矢先……みたいなキャラクターの行動や意思変化のプロットポイントが必要だったろ…。
彼が典子に後ろ向きだったのも「私の戦争は終わってない」の一言で説明したつもりだろうけど、全く意味不明で説明になってないぞ。
特攻しなかった後悔はわかるけど、だからって終始根暗である必要を感じがない。典子と新しい幸せを手に入れるが、ゴジラの登場によりそれが仮初であることに気づき、戦いで決着を付ける。みたいな展開で良かったろ。ほんとドラマパートの人間的魅力無さ過ぎ。

上記まではまだギリ許容できるクソ野郎だが、ゴジラ討伐作戦のヤジで不快感がMAXになった。典子を見殺しにして、ゴジラ討伐に協力する訳でもなく、なんなら邪魔する始末。普通この場面で分裂しそうな人々ををヒロイックな一言で団結させるのが主人公の役割じゃないのか?あの場面ですら成長しないのなんなん?逆張りが過ぎてマジでキモかった。

そもそも神木の演技もキツかった。現代人なら違和感ないけど、当時の人間には全く見えないし
演技に重さが感じられなかった。絶叫とか見てられなかった。


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ゴジラは根本的にデザインがダメ。現代や未来ならいいけど、昭和にあんな現代的なスマートなデザインの生き物いないって。メタ的な視点というか、昭和の概念に明らかに無いデザイン性なので終始違和感が凄かった。
全体のフォルムや泳ぐ姿、熱線から見るにギャレス版の影響が大きいと感じた。ストーリーは初代で、ゴジラはハリウッドの変な食い合わせに思えた。

強いか弱いか曖昧なのもね。
疲弊し切った日本、しかも民間人相手にに負ける時点で弱いに決まってる。そこにゴジラとしての魅力を感じなかった。根本的にゴジラじゃなくてよくね?
それに口の中が弱点て…………一番しょーもない発想……子供でも思いつく設定だぁ………。倒し方に意外性無さ過ぎてカタルシス無かった。子供の描いた脚本かよ。明らかに歴代最弱。無駄に熱線の威力だけ高い。カリスマ性の無さはエメリッヒ版と同レベル。



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あと細かい不満点とか。

ゴジラ初登場時にいきなり名前呼ぶのなんなん?
「現地人が」とか言ってたけど、描写されてないから一切説得力無いんだが?どこの現地の話してんだよ。それを又聞きした敷島が「現地の人が」って説明してたけど、だから!どこの現地の何の伝承だよ!!そういう細かいディテールをおざなりにしてるくせにメタファーがとか言ってんじゃねぇよ。

原爆のメタというか原爆過ぎるの何なん?
熱線の爆風自体はかなり良かった。原爆の非人道的な凶悪さを体験できる。でもそこからのきのこ雲、黒い雨はやり過ぎ。観客の想像の余地を奪った過剰な説明になっていて、単純にダサかった。爆風の被害だけで全然説得力あった。あそこまで説明しないとダメと思ってる時点で作家性の低さを感じた。
まぁ、『シン・ゴジラ』も終盤はゴジラじゃなくて原発そのものになってたけど。その点は製作側の作家性の弱さと、観客の理解力の低さが悪い意味で噛み合ってる。

退廃的な昭和初期を感じさせるセットは良かった。それに反して人物の喋り方や言葉選びが現代的で悪目立ちしてた。演技の面に当時の空気感を感じる要素が全くなかった。セットやVFXの頑張りに反し、演者がサッパリだった。ゴジラ以外のドラマの退屈さを加速させてた。

あと主人公の他のクズエピソードとしては、整備士を呼び出す方法がゲス野郎過ぎん?自分は戦争の傷癒えてませんアピールで終始ヘラって被害者面してて、なに人の古傷平気で抉ってんねん。自分が踏み出すときは躊躇するくせに、人に歩ませるときは強引で、純粋にクズだなぁと思った。

海洋戦は『ジョーズ』見てる気分でした。もちろん『ジョーズ』の方が圧倒的に面白い。民間船が助けに来るくだりは『ダンケルク』。

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そもそも何度も言うけど、『ゴジラ』を作るの難しいのよ。なぜらなゴジラを主人公にできないからね。彼には意思や目的、葛藤、ドラマが無いから。必然的に部外者をドラマの軸にをしなければならない。でもこの部分が昔からつまらない訳よ。無論今作も例外に漏れず。
正直スコア的には☆1.5ぐらいが妥当。しかし原爆メタという一番重い題材を選択してて、ラストでそれを台無しにしてんだから点数無いに決まってるだろ?観客舐めんなよ。
かといってゴジラは既視感まみれで、そう考えると『シン・ゴジラ』は本当に良くやったと思うよ。“蒲田くん”と“内閣総辞職ビーム”だけで劇場で観る価値があった。

今作評判いいらしいけど、すこぶるステマを疑う。『シン・ゴジラ』も持ち上げられ過ぎと思ったけど、今作と比較すれば褒めたくなる気持ちは理解できる。完成度は高くないけどカリスマ性や作家性、先進性はあるからね。
しかし今作なんてどこに褒める要素あんねん。“ゴジ泣き”とか言ってるらしいけど、絶対裏で広告代理店噛んでるやん。やり方がドラえもんの時と一緒じゃねぇか。

“−1.0”という題名だけは秀逸だと思うよ。
製作陣と私の“−1.0”の捉え方は全く違うだろうけど😅
磔刑

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