彦次郎

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)の彦次郎のレビュー・感想・評価

4.1
黒づくめの男たちの怪しい取引を目撃した高校生探偵工藤新一が幼児化する薬を飲まされたことで江戸川コナンとして黒の組織と対決する大人気ラブコメミステリーにして劇場版26作目。2023年5月8日に興行収入が100億円を突破した大ヒット作。理由としては本作のメインヒロインは灰原哀になっており過去作のオマージュ多数というのもあるでしょう。今までのシリーズを観ている方々なら熱くなること間違いなしの作品です。
あらすじとしては幼児化する薬APTX4869の開発者にして組織から逃げた宮野志保(灰原哀)が「老若認証システム」のエンジニアにして宮野志保時代の知り合い直美・アルジェントのUSBから黒の組織に正体が疑われ拉致されるという映画版としては衝撃的な話です。
出だしは八丈島のホエールウォッチングツアーに行くという定番の流れですが早々にコナン君が白鳥警部たちの乗る船に密航(小学生なので許されているが普通なら大問題)してインターポールの海洋施設「パシフィック・ブイ」に乗り込むというテンポの良さでした。
それ以降のお話は実際に本編をご視聴していただいた方がよいでしょうが述べておきたいのは作中で流れる『キミがいれば』。曲の流れるタイミング(敢えて詳述しません)とスローテンポで始まるバージョン、コナンと灰原哀の関係を示唆(作られたのは灰原哀登場前だけど)するような歌詞が素晴らしく本作のクライマックスといってもいえるのではないでしょうか。
本作のメインヴィランはラムの側近ピンガで強力な格闘技術に卓越したAI技術を持つ性格以外は優秀な人物で話を盛り上げてくれました。それよりも個人的に注目したいのはウォッカさん。味方を抹殺しまくる寧ろ組織の厄介者にしか思えないジンを兄貴と慕い「ですぜ」という口癖で多分組織の中でスパイでも何でもない真の構成員と思われます(逆に違ってたら作者は天才すぎる)。そんな彼が灰原哀をシェリーと気づく大金星を挙げていますが結局報われずという分かりやすい悪役だったのが良かったです。
今作の肝となるのが例の「老若認証システム」。AIによる幼少期の写真から成長した姿を生成し、それを世界中の警察の防犯カメラにつなげるという既にアメリカや中国辺りで開発されてそうな凄いシステムなのですが、ここで注目したいのはボスからベルモットへの指示。「をつぶせ」の先頭部分が読めないようになっているのですがこれを仮に「老若認証システム」とするならボスは生成AIで正体が割れる(側近のラムも行方が分からないと述べている)可能性大で本人も既に若返りもしくは幼児化しているのではと妄想させられました。またベルモットのフサエブランドへの拘りといい殺人事件よりも黒の組織について謎が深まるミステリーとして面白さがありました。
かなり長々と書きましたが端的にコナンと灰原哀のバディ感というか信頼感というか愛情というかそういったものを楽しめた作品。
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