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怪物のKanaiSatoruのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
怪物を観ました。
是枝監督は、次から次へと重たいテーマの映画を撮りますね。

今回、予備知識なく観たので、どんな怪物が出てくるのか、例えば子供って実は怖い裏の顔があるよ、みたいな話なのかと思えば、違う映画でした。

映画を観終わってから監督のインタビューも読みましたが、テーマは、誰もが怪物になり得ると言う話です。

物語は、子供の不審な様子から、いじめられていると思い込んだ親側の視点で描く前半。
中盤では先生からの視点。
そして子供側からの視点も描いて、3つの視点から同じ事象を見ると、どんなふうに見えるのかというのを丁寧に描いた物語です。

一方だけの側面からの情報では、怪物になり得る人も、もう一方からの側面で見れば、普通の人だったりする。

何か事件が起きた時、自分で取材することができない我々は、マスコミの情報を信じるしかない状況。
それでも本当にそれが真実なのか?
そのまま信じて良いのか?
日常的にそんな情報に触れている我々には、強烈に胸に刺さる映画でした。

中でも面白いと思ったのは、前半あれだけホラー的に描いていた母親のパート。
そのあとは別の視点に移った途端、母親の存在はゼロになり、視点が変わる度にそこで描かれる主人公にどんどん感情移入をしていつてしまう、その感じが監督のなせる技なのでしょうか。子供パートの音楽も良い!
人の感情をコントロールできる監督に感嘆します。

1つマイナス面を上げるとすれば、安藤サクラさんです。
中盤以降は全く存在感がなく、正直言って3分の1しか出ていない。
彼女がアカデミー賞を取ったことには違和感が残りました。今年のアカデミー賞は杉咲さんにあげたかったな。

という意味で、個人的には85点です。
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