KanaiSatoru

ベイビー・ブローカーのKanaiSatoruのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.0
Babyブローカーを見ました

唐突ですが、最初に申し上げると、僕はロードムービー好きです。
登場人物が旅をしながら、途中で様々な人に出会い、様々な経験をすることで成長していく。
最後、成長した、あるいは何か満たされた登場人物たちが笑顔になる、そんな映画が好きなんだなぁと改めて思いました。
この映画は、まさにそんな映画です!

物語は、金のために子供を人身売買する2人の男が主人公。
赤ちゃんポストから赤ちゃんを盗んで、正規外のルートで養子を求める夫婦に赤ちゃんを売る、そんな裏稼業で生活している。
もう1人は、赤ちゃんを捨てた母親ソヨンが主人公。
ひょんな事から、この3人が赤ちゃんの買い手を一緒に探す旅に出ることになる。
金にしか興味がなかった2人も変わっていくし、
やむなく自分の子供を捨てるしかなかったソヨンの本当の気持ちが明らかになっていく。

監督が上手いのは旅をするにつれ、この5人(もう1人成り行き上で増える)が本当の家族のようになっていくこと。
そして見ている。こちらもずっとこの5人が一緒にいられたらいいなぁと思い始める演出です。
これがまさに監督の意図したところで、観る側はその演出に乗せられてしまうでしょう。😌

ただそうはいっても、いつか終わりがやってくる。
さらに人身売買の捜査する警察の追っても迫ってくると言う仕掛けが用意されており、その辺の追走劇もハラハラ感がうまくミックスされています。


この映画のテーマについて、監督はインタビューに答えています。
「捨てるなら生むな」という誰しもが浮かぶ思いを否定し、観終わった頃には、違う価値観を得てほしいと語っています。

親のいない子供たちも生きていかねばならない。
捨てた親を否定するだけで終わらせず、生きていかねばならない子供達に自己肯定感を持たせて、幸せになるために我々に何ができるか?
そんな問いへの答えを探して欲しかったようです。

劇中で、ソヨンがある台詞を言う場面がありまして、そこは監督の思いが現れているといるのでお楽しみに。

ちなみに僕が気に入らなかったのは、最後ですね。
なぜあんな終わり方にしたのか?

監督は別のインタビューで、最後を考えずに取り始めたと言っています。
つまりは、原作もないわけで、どのような終わらせ方も自由に出来たということです。

であれば、あの終わり方はハッピーエンドでは無いですし、余計に意図がわからないですね。
そもそも物語に、ヤクザを絡ませる必要があったんでしょうか?
ヤクザの話は余計なストーリーのような気がしますね、そのせいで変な終わり方になった。

5人がひっそりどこかで暮らしていける終わり方もできただろうし、
ソン・ガンホが、別れた子供に会う機会が与えられて、その機会を楽しみにまっとうな道を生きることにした、的な話でもよかったと思う。

ハッピーエンドにしない方が話題になると思ったなら、浅はかな監督だな、と思う。
意図があるにせよ、複雑なラストは印象をややこしくするだけ。
余韻に雑音が混ざるだけです。

というわけで個人的には、80点です、ラストが良ければ85点だったかも。
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