great兄やん

シック・オブ・マイセルフのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)
3.7
【一言で言うと】
「哀れなる“狼”ども」

[あらすじ]
ノルウェーの首都オスロ。人生に行き詰まっている女性シグネは、長年にわたり競争関係にあった恋人トマスがアーティストとして脚光を浴びたことで激しい嫉妬心と焦燥感にさいなまれる。シグネは自身が注目されるための「自分らしさ」を手に入れるため、ある違法薬物に手を出してしまう。薬の副作用で入院することになり恋人からの関心は得たものの、シグネの欲望はさらにエスカレートしていき...。

病的な承認欲求の醜き末路。同情や称賛を“虚無”から生み出す上に無いものねだりの“虚栄”を張るというどうしようもなさに呆れて物も言えなかったが、それ以上に得体の知れない薬物を服用してまで自己顕示欲に駆られる主人公の様はドン引きどころか一周回って真の“インフルエンサー”じゃないかと思った笑。まぁもう笑うしかない“手遅れ感”は否めませんけどね(ーー;)...

とにかくシグネとトマスの関係性がガチでキッッッッッショい。もはやキモすぎて“お前ら一回社会的に死ね!!!”って本気で思ってしまった😅マジで。
共に彼氏彼女のカップルでありつつも、互いに嘘を吐き合い相手が称賛されれば自分はその足を引っ張るというどこぞのカップルYouTuberよりも見てて地獄だし、承認欲求を描いた作品も遂にこのようなフェーズを迎えてしまったのか…という想像を優に超える“深淵”ぶりに思わず目を背けてしまうほどイタいしキツい。

しかもトマスがそれなりの地位を確立して、焦ったシグネが注目を集めるために使った“手段”と言うのも滑稽で痛々しい有様だったし、取り返しのつかないリスクを度外視してまで目先の“快感”に溺れる彼女の様はまさしくSNS時代における生々しい“警鐘”を想起させる恐ろしさでしたね(・・;)...

とにかく“虚偽”で得た成功ほど副作用よりも恐ろしい“代償”を払うことになる、まさにオオカミ少年ならぬオオカミ“カップル”が陥る当然の末路に鼻で笑うと共に誰しもが“罹患”するであろう承認欲求の悍ましき依存を描いた一本でした。

人間誰しもが持つ“自己愛”はSNSに跋扈する猥雑な“個性”への羨望によって邪悪に歪ませてしまう危うさを感じましたし、人とは違う個性が欲しいという意味での結果としては、常人とはかけ離れた狂気的な“人間性”と“行動力”という個性が備わったという強烈な皮肉が効いているのもまた面白い。

承認欲求=“麻薬”というメタファーが効いた描写も説得力がありましたし、北欧の作品ならではの毒気がマシマシな世界観もまた見事な鑑賞“欲”を唆られる一作。ていうかパンフレットがすっごく独創的でメチャクチャ“個性”に溢れてましたね…あーあ、俺が作ったってコトにならねぇかなぁ〜(ハナホジ)...