かつきよ

名探偵コナン 灰原哀物語 黒鉄のミステリートレインのかつきよのレビュー・感想・評価

3.6
◆概要

内容としてはアニメ701〜704話の「漆黒の特急」編がほぼそのまま流される「劇場版再放送」が85%を締めています。
残りの15%は、冒頭部分、灰原哀ちゃんの初登場回から暫くのダイジェストが流れますが、最低限のおさらいという感じ。
アニメ版を毎週鑑賞していた人や原作勢にとって新しい情報はなく、履修は任意の作品。ただ、灰原哀ちゃんの現在の立ち位置を確定するこのストーリーは、23年現在で、最新話から300話程前のストーリーになります。記憶が薄れている方なんかは、「あー、こんな感じだったな、哀ちゃんの今の立ち位置」と再確認するのにはうってつけの作品です。
また、映画版御用達の「俺の名前は工藤新一」から始まり「体は子ども、頭脳は大人」「真実はいつも一つ」で締まるお決まりの常套句が、今回限りの「灰原哀バージョン」になっているのはユニーク。内容にもちゃめっ気がありますので一見の価値ありです。

◆コナン初心者には向かない

2023年最新映画「黒鉄の魚影」公開前の特別上映ということで、「コナン初心者でもこの映画だけ見ればOK?」と思う方もいるはず。
本当に時間がなく、労力も割きたくない、本当の本当の本当の最低限がいい!!という方はこちらの映画版はおすすめですが、不足する情報も多いので、時間に余裕がある方はもう少し他の回の履修もお勧めします。
具体的にどんな知識を持っていたらいいのかはこの二つ後の項目でまとめておきます。灰原哀とベルモットに関する情報は、長くなるので、予習回とそ後で明らかになる設定を三つ後の項目でまとめておきますので、興味のある方は参考までにご覧ください。

一つだけ、タイトルを挙げておくと、個人的には「黒の組織との再開」シリーズは絶対に履修しておいてほしいと思っています。(他の重要回は、作中の回想や冒頭のおさらいだけで最低限は事足りるものの、この回は重要度に反して説明が少ないです)

また、今作は大部分がミステリートレイン編の再放送なのですが、尺の都合で細かいセリフ・シーンが削除されているので、余すことなく全部を楽しみたい場合は(原作漫画か)アニメ版を履修した方が、誤差程度ですが情報量は多いです。
逆に言えば、誤差程度の情報はいらないのでスッキリシームレスに鑑賞したいという方は、劇場版が時短になるかも。

◆雑感

今作はベルツリー急行という列車の中でのミステリーという事で、伝説のオリエント急行に対するオマージュが散見される回でした。
毛利小五郎氏が終始「毛利ポワ郎」と名乗り、回を通して口髭がポワロを彷彿とさせるクルンとしたデザインになっているのが面白かったです。
本筋の事件は、いつもの青山剛昌節といった印象でした。車両内の雰囲気を利用したミステリアスな雰囲気作りは豪華で丁寧でしたが、殺人の動機や犯人は良くも悪くもいつもの感じ。そこそこ面白かったです。
ミステリートレイン編は、コナン陣営vs黒の組織がストーリーの肝で、思ったよりも多くのキャラクターが関わっていて、見応えがありました。
バーボンの正体や、火傷痕のある赤井に似た男の正体など、アニメ版700話に至るまでで張られた伏線がどどんと回収される回でもあります。色々な意味で重要回だなと感じました。

◆ミステリートレイン鑑賞前に知っておいたほうが良い情報(アニメ700話までのネタバレ情報有)
※灰原哀ちゃん、ベルモットに関しては、長くなるので次の項目で取り上げます

◇赤井秀一
頭脳明晰、イケメンで狙撃の腕が超一流なFBI
宮野明美に当たり屋行為をすることでつながりを持ち、黒の組織で潜入捜査をしていました。(潜入時、コードネームも与えられており、その名前は「ライ」でした)
宮野明美ちゃんとは恋仲でしたが、それは組織に潜入する為の偽りの関係。…だったはずなのですが、当時真実の恋人だったジョディ捜査官と別れ話を切り出していることから、明美ちゃんに本気で恋をしてしまった模様。
会話をしたことがあるレベルで宮野志保とも関わりがあるようですが、現在の哀ちゃんとは意識的に直接対面しないようにしているようで、23年現在においてもちゃんとは再会していません。
重要なのはここからで、キール編のラスト(491-504話 「赤と黒のクラッシュ」)で、色々あって赤井秀一は射殺されます。ジンに命令されたキールが頭を打ちぬいたことが死因で、決定的な死亡でした。なのにもかかわらず、顔にやけどを負った赤井秀一がこの後のストーリーでたびたび登場いたします。(563-564話 「探偵団VS強盗団」~しばらく)
この顔にやけどを負った赤井秀一は何者なのか!?というのを100話以上引っ張っていたわけですが、その正体が明かされるのが今回のミステリートレイン編であります。

◇世良真澄
イギリスからやってきた転校生で蘭のクラスメイト。男に間違われるボーイッシュなレディ。「646-647話 幽霊ホテルの推理対決」で初登場しますが、コナンにやたら執着します。コナン=新一に気づいており、何かと真実を暴こうとしてくるのですが、この時点ではその目的不明です。実は赤井秀一の妹、というところだけ押さえておけばOKです。

◇バーボン
キール編が終わった後に動き出した黒の組織のメンバー。正体は有名ですが、それが明らかになるのは、ミステリートレイン編が初です。だいたいベルモットと一緒に行動していて、ベルモットの駒みたいなイメージです。
候補者はこの時点で三人いますので、その紹介だけしておきます。

① 世良真澄
前述していた通り、赤井秀一の妹で女子高生探偵。コナンに執着し、新一だという事実を暴きたがるので疑われています。

② 沖矢昴
509話 「赤白黄色と探偵団」で初登場の大学院生。家が全焼してしまったので、なぜか工藤新一邸宅に住まわせてもらっています。コナン君は同じシャーロキアンという事で妙になついているのですが、初登場時哀ちゃんは彼から黒の組織の匂いを感じており、事あるごとにおびえています。
コナン君と同じくらい頭が良く、怪しい動きも多いため、只者ではないのは確かです。

③ 安室徹
667-668話 「ウェディングイブ」で初登場する個人探偵。被害者が浮気調査の為に雇っていた探偵という事で登場しますが、その後毛利小五郎に弟子入りし、頻繁に物語に絡むようになり、怪しい動きも見せます。
今回のミステリートレインにもスタッフとして搭乗しています。
余談ですが、初登場会の「ウェディングイブ」は、わりと鬱回なので、見るとしたらお気を付けください…。

◆作中使用されているアニメ回
 及び履修オススメ紹介(☆は重要度)

以下に履修した方がより今作を楽しめる話をまとめておきます。
あまりにも膨大になる為、詳しく列挙するのは【灰原哀】と【ベルモット】に関わる話だけです。それ以外のキャラクターに関する最低限の知識は前項にまとめてあります。【キール】など今作の映画では直接関わってこない要素は割愛してあります。

※各話簡単なネタバレ解説も付けます。実際に鑑賞して履修したい人はその部分は読み飛ばしてください


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【灰原哀関連】

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☆☆ 128話 「黒の組織10億円強奪事件」(2巻)
[シーズン3-43話 1998年12月14日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/53691.html]

灰原哀ちゃんは登場しませんが、灰原哀ちゃんに関連する最初で重要なストーリー。
劇中でも最低限の回想が入りますが、詳細な説明が無く、全くの未履修だと細かな点で「?」が出てくると思うので、もし余裕があれば鑑賞しておいてほしい回です。どうしても時間がない方は、あらすじ情報と……できればラストの部分だけでも!
最新話から900話以上前、25年前に放送されたストーリーですが、最新映画含め、重要な話ではいまだにこのストーリーの回想が挿入されます。灰原哀ちゃんにとって、人生のターニングポイントとなる回です。

※※※ネタバレ解説

コナンと親しくしていた銀行員女性「広田雅美」が10億円強盗を成功させるストーリーです。
実はこの銀行員女性の本名は「宮野明美」であり、灰原哀こと「宮野志保」の実の姉です。
両親が過去に黒の組織の開発部におり、娘である宮野志保も天才的な頭脳で〝薬〟の開発メンバーとして組織に重宝されていましたが、姉の方は末端扱いで、ほぼ一般人と変わらない生活をしていました。
明美さんは妹を危険な組織から抜けさせる為、組織に足抜けを直談判したところ、交換条件として10億円の強奪を命じられます。
(余談ですが、この頃赤井秀一は黒の組織に潜入する為、「諸星大」という名前で宮野明美と接触し、恋人関係になっています。明美さんは諸星大が、組織に近づくために偽りの恋人を演じてくれているだけだと悟っていたのか、10億円の作戦前に「組織を抜けることができたら、本当の恋人になってくれますか?」と赤井秀一にメールしています。組織を抜けたいと思ったきっかけは、妹だけではなく赤井秀一も少なからず関わってたと思われます)
組織は、宮野姉妹を脱退させる気などさらさら無く、10億円強奪は無理難題を吹っかけたつもりだったのですが、予想以上に明美姉さんは肝が据わっていて有能だった為に作戦を成功させてしまいます。
コナンは10億円強奪に関する真相に気づき、成功させたところで組織に殺されてしまうから10億円は渡してはいけないと明美さんを説得しに向かいますが失敗に終わります。
倉庫にて、明美さんは覚悟を決め、ジン・ウォッカと対面しますが、願いは叶わず銃撃され、10億円の入ったコインロッカーの鍵を奪われてしまいます。
コナンが駆けつけた時にはもう既に明美さんは瀕死でしたが、ジンに奪われた鍵はフェイクである事を伝え、本物の鍵と妹の事をコナンに託し、絶命します。
結局組織は10億円を手にできず、金銭的な被害はなかったものの、真相に気づいていながらも親しい人を救えなかったコナンの無念が大きく後を引く悲しい事件となりました。
姉の死がきっかけで、宮野志保こと灰原哀ちゃんも組織に反抗する事を決心しました。灰原哀の人生のターニングポイントと呼ぶに相応しい超重要回なのです。
ちなみに、明美お姉さんが組織に関して唯一知っていた情報「組織のカラーが〝カラスの様な〟黒」というのは何気にデカい伏線です


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☆☆☆ 129話 「黒の組織から来た女 大学教授殺人事件」(18-19巻)
[シーズン4-1話 1999年1月4日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/30217.html]
[公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=RAtd-PsXeLk]

灰原哀ちゃんが初登場する回。
ミステリートレインの映画内でも、冒頭に割と尺を取って流される為、映画で事足りると言えば事足りますが、細かいところまで余す所なく楽しむとしたら外せない回です。
アポトキシン4869という名前も初めて登場します。

「灰原哀転入」→「事件①に巻き込まれる」→「帰り道で正体を明かされる」→「事件②に巻き込まれる」→「ラスト」

というのが大まかな流れです。スペシャル枠なので事件が2つ存在するのですが、もし履修するならば、間に挟まる「事件①」は黒の組織と関係ある?と思わせておいて全く関係ないミスリードなので飛ばしてOKです(劇場版冒頭でもカットされています)
ただ、平然と銃を発砲する哀ちゃんのシーン(38:45~)は割と衝撃的。ただの小学生ではない……異常だ……と思わせるインパクトの強いシーンですので、哀ちゃんのフリークであれば是非そのシーンだけでも見ておきたいですね。(余談ですが、1000円札でタバコを買った人を見て「千円でタバコを買うなんて怪しい……」とコナンが疑う、ネットでよくネタにされるシーンはこの事件が元ネタです)
「事件②」も飛ばしても構いません(劇場版冒頭でもカットされてました)が、被害者の名前が「広田正巳」(ヒロタマサミ)で、10億円事件の犯人と同音名である事や、その理由は知っておいた方がいいかも。哀ちゃんの正体が確定し、ラストは初めて本心をコナンにぶつけると言う印象深いシーンがあります。このシーンはミステリートレイン映画本編の序盤でも流されました。

※※※ネタバレ解説

姉の死をきっかけに組織に反抗した宮野志保は、組織に監禁されてしまいます。ジンが戻り次第処分されるというタイミングで、志保ちゃんは隠し持っていたアポトキシン4869(コナンが飲まされたのと同じ薬)で自殺を図ります。
薬の影響で子供の体になり、手枷から手が抜けたことで、志保ちゃんは脱出する事ができましたが、行く当てがありませんでした。明美から「工藤邸の近所にコナンという聡い少年がいる」(1:12:45~の回想シーンです)と聞いていたことや、明美の事件の写真に写っていた少年が、アポトキシンを飲んで死んだはずの工藤新一と似ていたこと、アポトキシンの動物実験の際、死なずに幼児化したマウスが一匹だけ確認できた事から、志保ちゃんは「工藤新一と薬を飲んで幼児化したのでは?」と思い、一縷の望みをかけて工藤邸に向かいました。
その際、工藤邸の前で雨に打たれ力尽きて倒れていた志保ちゃんを、阿笠博士が保護しました。
ちなみに灰原哀という名前は博士と志保ちゃんが一緒に考えた名前です。「コーデリア・グレイ(グレイ=灰)」と「V・I・ウォーショースキー(I=あい)」から取ったと作中で述べられていますが、アイリーン・アドラーも元ネタのようです。博士は「愛」の方がいいと推していた様ですが、哀ちゃんが希望して「哀」という名前になりました。
コナンに対して挑発的・敵対的に見える態度をとっていたので、初期の頃はコナンからは猜疑心を向けられています。

事件②の被害者、広田正巳教授は、哀ちゃんの姉「宮野明美」の大学時代の恩師だった事がラストで明かされます。恩師から名前を拝借して、偽名を同音にしていたのでした。
難事件を解決した江戸川コナンに、哀ちゃんが「どうして…」と声をかけるシーン(1:26:30~)は必見。
「あなたほどの推理力があれば、お姉ちゃんのことなんて簡単に見抜けたはずじゃない!」「どうして助けてくれなかったの…」と泣き崩れるシーンは、後にも先にも灰原哀が感情的になり泣き崩れる唯一のシーン(のはず)。このシーンは映画版ミステリートレインの冒頭でもピックアップされています。


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○ 130-131話 「競技場無差別殺人事件」(19-20巻)
[シーズン4-2話 1999年1月11日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/36508.html]
††《コ哀聖地巡礼回》

劇場版の回想で一瞬だけ哀ちゃんの年齢に関するシーンが流れます。そのシーンがあるのがこちらのストーリー。哀ちゃんが年齢を語る初めてのシーンですので、度々回想に使われますが、事件自体は特に重要ではない為に本編の大部分は飛ばしても影響ありません。
ですが、哀ちゃん加入直後の回と言うこともあり、コナンと哀ちゃんの絡みが多めで、コ哀愛好家にとっては常識と呼べる名シーンがある他、物語全体に関わりそうなセリフが出てきます。
具体的にどんなものか、再生時間とともに以下に紹介いたします。

※※※ネタバレ解説

●1話目6:35〜

コナンが初めて哀ちゃんに自分の衣服を貸すシーンがあります。
組織に顔を見られると危ない、と積極的になれない(と言うかサッカーに興味もなさそうな)哀ちゃんに、自分の被っていたつばつきのキャップを被せ、これで大丈夫だからもっと近くでサッカーをみよう!と言うコナンくん。自分の帽子を被せるなんてイケメンムーブですが、ただ一緒に大好きなサッカーを見たいだけで、他意が無さそうなのは初期から今まで変わりません。
哀ちゃんの反応は冷めていますが、最新話になるにつれここからどんどんと変わってきますので、今との比較を楽しめるシーンでもあります。

何気にこの後に

「工藤くん、あなたは夢にも思ってないでしょうね。あなたは既に、我々組織が半世紀前から進めていた秘密プロジェクトに、深く関わってしまっているなんて」

という哀ちゃんのモノローグが入ります。
かなり重要度の高いセリフで、つまり哀ちゃんはそのプロジェクトを知っている……と言うことになります。
ですが、23年現在に至っても、プロジェクトの全貌は謎のままで、哀ちゃんの口からも特に語られていません。

●1話目8:15〜

「あなたがいたもの」

コ哀勢に人気の会話シーンです。
恋愛的な感情は感じられませんが、哀ちゃんが急に小学生として生活を始めるにあたって「同じ境遇の存在が近くにいる」事が心強かった事が語られます。
サラッとあっさり語られますが、本心だと思われます。この後、様々な出来事を通して哀ちゃんの中でコナン君の存在が大きくなっていくのですが、この当時から既に、唯一の共通点を持つコナンくんは、哀ちゃんにとって特別だったんですね。

●2話目15:28〜

「時の流れに、人は逆らえないもの。それを無理やり捻じ曲げようとすれば、人は罰を受ける」

哀ちゃんが突然語り出してコナンくんがちょっと引くシーンです。
かなり含みがありますので、組織で行なっていた実験や、秘密のプロジェクトに関連するセリフだと思われます。

●2話目23:15〜

「あたし本当は、あなたとお似合いの18歳よ」

1話目の途中でコナン君に自分は88歳だと嘘をついて茶化していた哀ちゃん。
本当は……と言うところで事件が発生して会話は遮られてしまいますが、2話目ED語の会話にて実年齢を明かすシーンが挿入されます。今回の劇場版に挿入されるシーンもこの部分です。
この時の「お似合いの」と言うセリフは完全に冗談や揶揄の言い回しですが、今となってはニヤニヤせずにはいられない会話です。
コ哀ガチ勢は是非チェックしておきたい会話です。


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☆☆☆☆☆ 176-178話 「黒の組織との再会」(24巻)
[シーズン5-3.4.5話 2000年1月17日放送〜]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/32771.html]
††《コ哀聖地巡礼回》

哀ちゃんの正体が組織にバレ、囚われてしまうという大変重要度の高いストーリーです。コナンと哀ちゃんの組織との直接対決を描いています。
巻き込まれる事件そのものも、黒の組織が直接手を下す組織のための殺人事件なので、3話通してかなり豪華な回。
ミステリートレイン編含め、この後の重要回では高確率でこのストーリーから回想が挟まるのですが、重要度に反して説明はほとんどなく、終盤の盛り上がるシーンがパパッと映し出されるだけな為、履修してないと「これなんのシーンだ?」「どうしてこうなったんだ?」「どうやって切り抜けたんだ?」とモヤモヤする事になるかも。
この回では、新たな黒の組織のキャラクターが2人登場しますが、1人は最新話現在までガッツリ関わってくる重要なキャラクターで、もう1人も要所要所で名前が出てくるキャラクターなので、押さえておきたいポイント。
また、コナンが自分のメガネを哀ちゃんに貸してあげると言う、コ哀回ではメッカとなる聖地巡礼シーンも存在しますので、この話は色々な意味で履修必須。
その他、アポトキシンに関する詳細な説明が(途中まで)聞けるのもこの回だけ。

※※※ネタバレ有り解説

下校の道中、通りに停車されているジンニキのポルシェを発見したコナン君、大興奮で扉をこじ開け、盗聴器を仕掛けます。
街中をめちゃくちゃ珍しいアンティークカーで移動し、大通りを目立つ黒づくめで堂々と歩くジンとウォッカの2人に多くの人がツッコミを入れたハズ。どう考えても職質待ったなしですよね笑
盗聴器の会話から、パーティー会場にて組織による殺人が行われる事を突き止めたコナンと哀ちゃんは、パーティーに潜入します。
1話目、17:08~
怯える哀ちゃんに、コナンがメガネを貸してあげるシーンはコ哀巡礼の地なので必ず確認しましょう。

メガネのご利益は無く、哀ちゃんは身バレして拉致監禁されてしまいますが、ホールでの殺人事件の事情聴取で自由に動けない犯人(黒のメンバー)は酒蔵に哀ちゃんを放置してしまいます。
犯人のいない間に哀ちゃんとコナンくんは探偵バッヂで連絡を取り合います。位置を割り出し、哀ちゃんを助け出そうとするコナン君。
部屋に煙突があるので大人の体だったら登れたかも……という風邪気味の哀ちゃんに、コナンくんは「白乾児(パイカル)」という酒を飲めと指示します。
実は、48-49話「外交官殺人事件」にて、風邪状態で白乾児を飲むと大人の姿に戻ると言う設定が判明しており、コナン君は哀ちゃんを大人姿に戻す事で煙突から脱出させようとしたのですね。
余談ですが、2話目のラストか、3話目04:08~の、パイカルを飲んで喘ぎ苦しみ大人姿に戻る哀ちゃんのアニメーションは、スタッフの性癖がドッヂボールの様にぶつけられたのでは?と疑いたくなるカルト的な人気を誇るシーンです。苦しむ哀ちゃんの作画と、林原さんの大絶叫が堪能できます。
余談2ですが、後日哀ちゃんは、この時の「風邪のときに白乾児を飲むと元の姿に戻る」というメカニズムを解明し、アポトキシンの解毒薬を開発します。
しかし治験や動物実験ができていない事から、どんな副作用があるかわからない点、多量に摂取すると抗体ができて薬の効き目が薄くなっていく点など、デメリットや懸念点も多いため、解毒薬の服用は有事以外禁止しています。ミステリートレインにもこの薬は登場いたしますので、解毒薬はこの時の出来事をヒントに作られたもので、デメリットがあるので大切なときにだけ使うようにしている、と言う点はぜひ押さえておいてください。

さて、身動きの取れない組織メンバーの代わりに、直接シェリー(哀ちゃんの組織時代のコードネームです)の顔を拝みにきたジンニキですが、一歩遅く哀ちゃんは煙突登り中。
しかし、煙突を登っている音が漏れていた為、屋上で待ち伏せされて宮野志保ちゃんは銃で殺されかけてしまいます。(ここで、ジンニキには子供姿は見られていない、というのが重要です!)
この際の「見ろよ。綺麗じゃねーか…闇に舞い散る白い雪…それを染める緋色の鮮血…組織(われわれ)の目を欺くためのその眼鏡とツナギは、死に装束にしては無様だが…ここは裏切り者の死に場所には上等だ…」はジンニキポエムとして大変人気です。
間一髪駆けつけたコナンが作った隙で、再び煙突に飛び込む哀ちゃん。(このタイミングで白乾児の効果が切れまた子供姿に戻ります)
元の酒蔵には、パーティー会場の事件の犯人であり、黒の組織のメンバーのピスコが待ち構えていました。(真犯人なのにどうやって事情聴取を切り抜けたのか、というのはラストに明かされます)
ピスコは宮野姉妹の両親と仲が良かった為、幼少期の志保ちゃんをよく知っており、哀ちゃんの顔を見ただけで志保ちゃんだと気付けたわけですね。
そんな知っている女の子も組織の命令なら容赦なく殺害しようとするピスコですが、コナン君に邪魔され、哀ちゃんを逃してしまいます。
実はピスコは、今回殺人を犯した瞬間を写真に撮られてしまっていました。パーティー会場で撮影されたセレブの熱愛写真の端に映り込んでいたのです。重大なミスを犯したピスコは、煙突から降りてきたジンに「あの方」の命令だと言って射殺されてしまいます。
このシーンは、ジンニキ味方殺害伝説の始まりです。「灰原哀=シェリー」に気づいたメンバーから情報を回収する前に殺してしまったので、「ジンニキ無能w」ネタの一つとして槍玉に上がる事がありますが、実際にピスコは重大なミスを犯していて、始末はあのお方の命令でもあるわけなので、ジンニキはわりと真面目にお仕事をしていただけの様に思えます。
殺す前に話くらいは聞いてもよかったのでは?とも思いますが、ミスを犯したメンバーの釈明なんて、その場しのぎの嘘の可能性もありますし、聞く耳持たないのが正解な気もしますよね。

殺されてしまったとはいえ、なぜ犯人のピスコが警察の事情聴取を切り抜ける事ができたのかと言うと、実はその会場にいた世界的な女優クリス・ヴィンヤードも黒の組織の一員であり、彼女がピスコを助けていたと言うオチでした。
また、この女優の正体こそベルモットであり、彼女は黒の組織の活動に専念(?)する為、この後女優活動を休止します。
ベルモット初登場回ですが、今に比べてオーラのない(あまり美人じゃない)顔をしているので、見返した時「あれ……これ、ベルモット……だった、はず……?」となりました。キャラ人気に伴って初登場からかなり顔が変わったキャラだと思います。


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☆☆☆230-231話 謎めいた乗客(29巻)
[シーズン6-12話〜 2001年4月16日~放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/32783.html]
††《コ哀聖地巡礼回》

哀ちゃんは「近くに組織がいると嗅ぎ分けられる」能力がある事が判明します。1話目の8分あたりでコナン君が哀ちゃんを嗅いでみるシーンが地味に笑えます。
事件自体はバスジャックの話であり、少年探偵団の活躍もちょっと見られるよ、と言う程度のストーリー。
バスの中に黒の組織の気配を感じ、終始哀ちゃんは怯えていて可哀想です。
今では大人気、赤井秀一の初登場回であり(こんな昔から登場してたんですね)ベルモットに関するヒント回、リード回でもあります。

ラストはコ哀民の爆心地であり伝説のシーンである「バス爆発シーン」があります。
コナンと哀ちゃんの関係性や、この後の哀ちゃんの価値観を決定づけるシーンでもあり、今後の哀ちゃんが関わる重要なシーンでは、いまだに度々この爆発シーンの回想が挿入されます。
是非ラストだけでも鑑賞していただきたい重要回。特にコ哀民は飛ばすことはできない巡礼の聖地ですので、心して鑑賞してください。

※※※ネタバレ解説

バスの中で感じた黒の組織の気配はベルモットのもの。ジョディ先生と新出先生がベルモット候補、赤井秀一もジョディと目配せしていたので怪しいぞ?と言う回ですが、実際にはベルモットは新出先生の方で、赤井秀一とジョディ先生はベルモットを探していたFBIでした。
この回でベルモット(新出先生)は本気でコナンくんを庇っているので、この事から後々コナンは「親友の息子は巻き込みたくない」と言う理由から、ベルモットは自分に手優しいのだと推理します。が、実際は別の理由です。(親友の息子、とはどう言う意味なのかわからない方は、この後ベルモット編に載せる「工藤新一NYの事件」の解説かwikiをご鑑賞ください)

なんだかんだ事件は解決しますが、爆弾は起動し、バス爆発30秒前。
乗客は自由、全員外に逃げ出した……と思われていたのですが、哀ちゃんはなぜかバスの中に残っていました。(2話目17:38~)
事情聴取で黒の組織に顔を見られ、正体がバレてしまう事を恐れた哀ちゃんは、そのまま爆死しようとするのです。
そこで颯爽と駆けつける江戸川コナン。爆発直前のバスから哀ちゃんを抱え、窓を突き破って脱出。さらに、哀ちゃんは怪我をしているから病院に連れて行ってくれ、事情聴取は自分だけが受ける、と警察に打診。この対応によって、哀ちゃんは黒の組織とも顔を合わせずに済みました。コナンは「逃げるなよ灰原…自分の運命から」と哀ちゃんを叱咤激励。おまけに灰原哀ちゃんの足に大量に付着していた血は、哀ちゃんを現場から遠ざけるため、怪我をしているように偽装する目的でコナン君が付けたコナン君自身の血でした。…コナンくんのスーパーヒーロー具合、これで恋せずにいられる方がおかしいのです。


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〇312-313話 「夕日に染まった雛人形」(38巻)
[シーズン8-8話〜 2003年3月3日~放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/41537.html]

重要度はかなり低いですが、事件発生前、雛人形に関する会話で、たった数分ですが哀ちゃんから家族についての情報が語られます。ミステリートレイン編でも魚影でも特にこの情報が関わってくるシーンはないので履修は不要ですが、哀ちゃんフリークなら是非チェックしておきたい情報ですね。

※※※以下ネタバレ解説

両親は哀ちゃんが生まれてすぐに事故で亡くなっていることと、父親の名前が「宮野厚司」であることが明かされます。マッドサイエンティストとして学会から追放されたようです。興味があるようでしたら鑑賞もいいかもしれませんが、基本本編にかかわるのはこの情報だけ。


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☆329-330話 「お金で買えない友情」(39巻)
[シーズン8-26話〜 2003年7月28日~放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/32215.html]
☨《哀あゆ聖地巡礼回》

同じく重要度は低く、見なくても影響は無いのですが、冒頭で哀ちゃんのお母さんについての情報が出てきますので、哀ちゃんフリークならチェックしておきたい回です。
また、あゆみちゃんが「灰原さん」呼びから「哀ちゃん」呼びに切り替えたいがためにもじもじするという、いじらしい姿が見られる人気回ですので、哀あゆの絡みが好きな方は冒頭と2話目のラストは必見です。
その他、「友情」がテーマとなっているという事で、直接は登場しないものの蘭の友情観が伺えたり、事件関係者達の友情観に対して言葉足らずながらも声を上げるあゆみちゃんをフォローする様に哀ちゃんが続けるセリフは印象深い名言です。余裕があれば見てみてもいいかも。

※※※ネタバレ解説

コナン君が、阿笠博士は、宮野博士(灰原父)のこと知らないのかなーと思っていると「宮野博士ならあったことあるぞい」と言われます。マッドサイエンティストとは思えないほど気さくでいい雰囲気の博士だったらしく、博士のへんてこな発明も褒めてくれたとのこと。
それよりも、一緒にいた奥さんの方がなんだか陰気で怪しい感じだった、とのこと。
奥さんの名前は「宮野エレーナ」で、イギリス人だったことも判明いたします。哀ちゃんは外国人とのハーフだったんですね。


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☆☆340-341話 「トイレに隠した秘密」(41-42巻)
[シーズン8-37話〜 2003年11月3日~放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/48025.html]

かくかくしかじかあり、宮野明美さんが死ぬ前に、灰原父の友人のデザイン事務所を訪れ、トイレに何かを隠していたことが判明します。
組織に見つからない様にわざわざ隠したという事で、組織にかかわる重要なアイテムなのではないかと勘繰りますが、果たしてそのアイテムとは…
このアイテムが伏線になっていて、それの伏線が明かされるのが「ミステリートレイン編」でもありましすし、この回のラストの回想は要所要所で登場。今後も登場するかもしれないので、トイレに何を隠したのか、という部分だけでも履修しておくことをお勧めします。
また、トイレでアイテムを捜索する為にコナン君と哀ちゃんが一緒にトイレに入り、デザイン事務所のメンバーに引かれるシーンがあり、ちょっと笑えます(笑)

※※※ネタバレ解説

哀ちゃん家族の情報が更新。
哀ちゃん出産前、両親が小さな町医者をしていたことが判明しました。
因みに、安室透は町医者時代の宮野エレーナと面識があり、エレーナに会いたいがためにわざと頻繁に怪我をする程懐いていたことが、かなり後の話で判明します。(952-954話 「迷宮カクテル」)
誰も見向きもしなかった宮野父の研究持論を支持するスポンサーが現れ、エレーナの姉(メアリー世良=赤井・真澄の母説が有力です)にも怪しいからやめとけと言われ迷っていたのですが、哀ちゃんの妊娠をきっかけに支援を受けることに。組織の研究所に行く際に持ち家をデザイナーの友達に貸していたとの事です。
また、エレーナが組織内で「ヘル・エンジェル」「地獄に落ちた天使」と散々な名前で呼ばれていたことが哀ちゃんの口から明かされます。「迷宮カクテル」にて出てくる町医者時代の回想では二人は明るく健康的な印象ですので、厚司がマッドサイエンティストと誹られ、エレーナがヘル・エンジェルという中二渾名を付けられたのは、組織と関わりをもった後という事がわかります。

明美お姉ちゃんが隠していたのは、ラベルに番号が割り振られたテープでした。
中身は、機密情報…ではなく、ラベル番号に対応した歳を迎えた「宮野志保」ちゃんに充てた、お母さんからのバースデーメッセージ…だったのでした。
天涯孤独の身の上で、記憶も殆ど存在しない母からのボイスメッセージ。哀ちゃんはこの事件の後も定期的に一人でこのメッセージを聞いているようです。切ないながらも、心温まるオチ…。
ラストシーンだけでも、是非見てみてください。


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○ 346-347話 「お尻のマークを探せ」(42-43巻)
[シーズン9-2話〜 2004年1月19日放送]
†《哀あゆ巡礼回》

直前の放送回「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」の後日談に当たる話。
二元ミステリーの詳細は、【灰原哀関連】ではなく【ベルモット関連】のストーリー一覧で紹介・解説しています。哀ちゃんというよりは、ベルモットに関する様々な事実が明かされる回だからです。

「お尻のマークを探せ」はあゆみちゃんが犯人の顔を目撃し、元太くんのお尻についたマークが犯人特定の鍵になるという少年探偵団回。
事件自体は重要ではないのですが、二元ミステリーの事件を受けて、FBIが哀ちゃんへ提案した「証人保護プログラム」への返答がこの回で行われます。
簡単にいうと、哀ちゃんは、黒の組織の追及から逃れるために、戸籍や人生を丸ごと捨てて別人として生きるかどうか(もちろんコナンや探偵団とも疎遠になります)という選択を迫られており、哀ちゃんがその答えを出すきっかけがこの事件で語られます。

※※※以下ネタバレ解説

物語後半で、容疑者は3人まで絞られますが、誰かまでは特定できない状況下になります。
直接犯人に会ってもし特定できなければ、逃した犯人に危害が加えられる可能性があるので、あゆみちゃんは探偵団と一緒に離れたところから容疑者を観察します。しかし状況は好転せず、犯人はなかなか分からない状況が続きます。そんな時あゆみちゃんは

「そばで見たら犯人がわかるかも」

と言って、犯人に近づこうとします。
しかし、哀ちゃんは

「それで犯人が捕まらなければ、大変なことになるかもしれない。」
「あなただけじゃなく、あなたに加担した皆も、犯人の仕返しに会う恐れがある。」
「耐えて身を引くのも一つの勇気」
「(自分のためにも、みんなのためにも、これが正解……)」

とあゆみちゃんに返します。
自分の置かれた状況と、あゆみちゃんの置かれた状況を重ね合わせての発言であり、この時点ではおそらく、哀ちゃんは証人保護プログラムを受けることで、自分はもちろん、今関わりのある友人たちも黒の組織の脅威から遠ざけようと決めていたのだと思います。

一旦会話はここで終わるのですが、ED語のCパートにて、会話に続きがあった事が明かされます。

「でも私、逃げたくない……!」
「逃げてばかりじゃ勝てないもん、絶対!」

この言葉を聞いた哀ちゃんは、証人保護プログラムを断る決断をします。
あゆみちゃんのまっすぐさが、哀ちゃんの後ろ向きな論理性を打ち崩し、前向きな決意に変えた瞬間です。
哀ちゃんがあゆみちゃんに優しく、仲がいいのは、ただ小さな女の子がかわいいから〜という理由ではなくて、彼女のまっすぐさにこうやって度々救われたり、気付きを与えられているからなのかなと思うと胸の熱い回です。
アニメwikiでもページの見つからなかった事件で、本筋に関わる大事件でも無いのですが、個人的にはこの回も哀ちゃんの価値観に強く影響を与えた出来事が描写されていると感じており、とても気に入っている回でもあります。


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☆☆ 699-700話 灰原の秘密に迫る影(77巻)
[シーズン18-19話〜2013年6月8日~放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/35463.html]

話は飛んで9年後の放送回。
この間にも重要な話はあり、黒の組織との直接対決はあるのですが(ブラックインパクト、赤と黒のクラッシュ等)、基本的に哀ちゃんは組織の脅威から遠ざける、というスタンスが取られている為に対決回はコナンとの一騎打ちで、哀ちゃんは深く関わってきません。
サブキャラと哀ちゃんの関係性を匂わせる回や、細かいネタは多いのですが、哀ちゃんと黒の組織が直接大きく関わるのは続くミステリートレイン(今回の映画版)からになります。
「灰原の秘密に迫る影」はミステリートレインの前日譚です。事件自体は重要ではないのですが、鈴木財閥の関係で少年探偵団含むいつメンがベルツリー急行という列車のミステリーツアーに招待されだという話題が出てきます。その招待状が指輪になっており、皆が指にはめているという事が後々ちょっとだけ重要になります。それに関連して、最終面で起こったある事がきっかけで、ミステリートレイン編にて哀ちゃんが黒の組織に狙われることになるので、できればその情報だけでも履修しておきたい話。
劇中でも少し説明がありますが、「なぜそうなった……?」と疑問が残るレベルの情報量なので、文字だけでも履修しておくことがおすすめです。

※※※ネタバレ解説

キャンプでとある事件に巻き込まれ、コナンを除く少年探偵団が山小屋に監禁されてしまいます。
コナンと世良真澄が推理で犯人を追い詰め、探偵団が囚われている事実と山小屋をつきとめるのですが、助けに行った時には、もう山小屋は燃え盛る炎の中。少年探偵団は焼死した……と思われたのですが、脱出していました。

絶体絶命の窮地に立たされた哀ちゃんが、持っていた解毒剤で大人の姿に戻り、大人の腕力で斧を振り上げて扉を破壊したのです。(哀ちゃんが元の姿に戻るのは、黒の組織との対決以降2回目という貴重な回でもあります。恋愛にうつつを抜かしすぐに高校生体に戻ろうとするコナンくんとは違い、自分の意思で解毒薬を使ったのは今回が初めて。それだけ、少年探偵団のメンバーを大切に思っている証拠ですし、同時に自分のことも大切に出来るようになったことが伺えます。)
「哀ちゃんに顔が似てたお姉さん」と少年探偵団に思われてしまいますが、まっすぐな子たちなので、「屋根裏に住んでた通りすがり」で納得してもらえ正体はバレませんでした。
……が、そのまっすぐさが災いして、「お礼を言いたい」という理由で志保ちゃんの素顔は光彦くんに盗撮されてしまいます。それだけならまだいいのですが、その人物を探してもらう為、光彦くんは博士のパソコンに写真を転送してしまうのです。その写真には、指にハマったベルツリー急行の招待状までバッチリ映っています。
当然の権利の様にメールを傍受した黒の組織は、「これシェリーじゃん」「ベルツリー急行に乗るんじゃん」と特定してしまい、車内で命を狙われる羽目になると言うことです。

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【ベルモット関連】

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○ 170-171話 暗闇の中の死角(24巻)
[シーズン4-42話 1999年10月18日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/35001.html]

ストーリー自体の重要度は極めて低いのですが、この事件の結末を知っていないと、vsベルモット編の最終局面の一部会話が「???」となります。
見る必要はないと思いますが、座学として知っておいてもいいかも。一瞬???となるだけで進行不能になるほど重要な回でもないのですが……

※※※ネタバレ解説

この回で登場する被害者の息子が「新出先生」として、この後蘭達の高校に赴任してきます。
高校の英語教師ジョディ先生と新出先生、どちらかがベルモットの変装で敵なのですが、最終局面においてこの回の事件の真相を知っているかいないか、と言う事が取り沙汰される会話が挟まれます。

この事件の犯人は新出先生の母親(被害者の妻)なのですが、直接的な原因は、家政婦さんが〝そうとは知らずに〟ブレーカーを上げてしまった事でした。知らなかったこととはいえ、自分の手で人が死んだと分かり、ショックを受けてしまう事を懸念したコナンくんと真犯人は、警察公認でこの部分の事実を隠蔽します。
息子である新出先生も、数少ない秘密の共有者なのです。


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☆☆ 286-288話 工藤新一NYの事件(34-35巻)
[シーズン7-25話 2002年7月22~日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/31181.html]

冒頭は前話の中華店の殺人事件後から始まるのですが、この事件は特に本筋には関わらないので見なくてもOKです。
この話までに、「蘭は赤井秀一に見覚えがあるのだけどどこで会ったのか思い出せない」と言う流れがあったのだけ知っていればOKです。
このタイミングで、赤井秀一に会った過去にまつわる事件を思い出す、というのが今回の流れです。

この話では、新一と蘭がNYに遊びに行き、母工藤有希子とゴールデンアップルというお芝居を見に行った時の事件のお話です。
劇場前で出会うキャラクター「シャロン・ヴィンヤード」はユキコママの役者時代の大親友であり、黒の組織の幹部ベルモット、ことクリス・ヴィンヤードの母です。
クリスヴィンヤードが黒の組織だと判明した際、コナンは微妙な反応を見せますが、それは母の親友の娘が黒の組織だったことを残念に思ったからですね。
また、事件解決後もストーリーは少し続き、蘭がある事件に巻き込まれます。ここから先の展開は、この話を見ただけだと、ふーん……で終わってしまうのですが、実は「ベルモット」と言うキャラクターを理解するための核となる最重要ストーリーですので、鑑賞+どう言う事だったのか調べる事をおすすめします。
ミステリートレインで、ベルモットとある人物の会話は、この辺りの設定を知っておくとグッと理解度が深まります。

※※※ネタバレ解説

直接は関係のない情報ですが、有希子が女優になりたての頃、スパイの役作りのために、日本のマジシャンに弟子入りして変装術を習ったと言う設定が出てきます。その時一緒に変装術を教わったのがシャロンだった、との事ですが、実はこのマジシャンというのが黒羽快斗の父、盗一という裏設定があります。
ファンによる考察ですが、盗一は優作の兄弟や親族なのでは?という説があるので、マジシャンに弟子入りしたのはその関係かもしれないですね。

この話では確定しないのですが、実はシャロンの正体はクリスです。親子ではなく本人なんです。
何からの理由で老けないクリスは、老けメイクでシャロンに変装していたというわけです。
ベルモットと有希子が変装を得意としているのは、師匠が同じ天才的なマジシャンだからですね。

蘭が「神様に感謝しなくちゃ」と無邪気な発言をしたことに関して過剰に反応して「神様なんていない」「少なくとも私にエンジェルは微笑みかけてくれなかったもの……一度も」「私の人生は不幸の連続」と言い放ったのはシャロンですが、そのままベルモットの価値観だということになります。ベルモットの過去に、神様なんていないと思わせるような過酷な真実が隠されている伏線にも思えます。

事件本編ではシャロンは退場。

事件解決後、重要事件が発生します。
帰り道で、蘭がニューヨークで流行りの通り魔に襲われる事件が発生。
(今の蘭なら空手で成敗できそうですが)蘭は通り魔に殺されかけます。しかし、そこで通り魔が寄りかかっていた柵が壊れ、落下しそうになったところで、何を思ったのか蘭は通り魔の手を掴みます。
新一にも助けてもらい、2人で通り魔の命を助けると、「なぜ助けた」と問う通り魔に新一が「人を人を助ける理由に、論理的な思考は存在しねーだろ」と言い放ちました。

後日、なぜかシャロンは有希子に「蘭ちゃんに伝えといて、私にもエンジェルがいたみたい」と伝えるのでした。

……実は、この通り魔は、通り魔に化けたシャロン(ベルモット)だったのです。
狙いは、通り魔(雑魚)に化ければ、油断して近づいてきた赤井秀一を楽に葬れると考えた為だったようです。
そんな中、偶然蘭と出会い、殺そうとした相手である蘭と新一に助けられたのです。この出来事に、シャロン(ベルモット)は救いのようなものを感じます。自分を殺そうとした人を助けようとするなんて飛んだお人よしですが、人生において救いは無かったと言い放ったシャロンにとって、蘭が文字通り「エンジェル」に見えたのはいうまでもありません。
ベルモットが蘭のことを「エンジェル」と呼び絶対に傷つけないようにしているのは、この事件があったからだと思われます。


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☆☆☆345話 「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」(42巻)
[シーズン9-1話 2004年1月5日放送]
[wiki:https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/32902.html]

スペシャル枠で放送された2時間回。
これまで誰が味方で誰が敵なのかわからなかった「ジョディ先生」「新出先生」「赤井秀一」の正体が一気に判明し、ラストはベルモットとコナンが直接対決をする激アツ回です。哀ちゃんに関する新情報は登場しませんが、蘭と哀ちゃんの関係を決定づける名シーン(と個人的に思っている)がありますので、ラスト付近は必見かも。ベルモットの情報が知りたいなら重要度はそこそこ高め。最終的にメイン、サブメインの様々なキャラクターが活躍するので、そういう意味でも豪華な回。

※※※ネタバレ解説

この回では

・ベルモットはジョディ先生の父の殺害犯であり、20年前の殺害当時から全く老けていないこと
・ベルモットは蘭をエンジェルと呼び絶対に危害を加えないようにしていること
・コナン=新一にも気づいているが、組織を壊滅させることができるとしたら彼だけだと思っていること
・どうやらベルモットは組織の崩壊を望んでいる…ような雰囲気を醸し出していること

が判明。また

・シェリーが幼児化している事がばれると、コナン=新一も組織にばれ、その関係者である蘭にも被害が及ぶため、哀ちゃんの秘密を組織に報告せずあきらめる

という方向性が決定づけられます。ミステリートレインではまた哀ちゃんの殺害に参加するのですが、これは、「宮野志保がミステリートレインに乗る」という決定情報がリークされてしまったためで、かばい切れなくなったためです。(劇場版ではカットされていますが)哀ちゃんは殺すしかないけど、ごめんねコナン君…というようなモノローグが冒頭で入っています。

2元ミステリーは、簡単に言うとコナン陣営が灰原を独りにしてベルモットを誘い出し、灰原を襲わせることでベルモットと直接対決するストーリーです。
実際にはジョディ先生が哀ちゃんを車に乗せ、新出先生がそれを後から追っていました。この時点ではどちらがベルモットかは判明していなかったので、見ている側はドキドキしていたでしょう。
ジョディ先生はFBIで、新出先生が変装したベルモットでした。(この際に「暗闇の中の死角」の事件の会話が出てきます)
FBIで港を包囲していたはずが、ジョディ捜査官に変装したベルモットが撤退命令を出し、代わりに仲間のスナイパーカルバドスを配置していたことで、形勢逆転します。
しかし、そこでまさかのコナン君登場。連れ去られた哀ちゃんは本人ではなくコナン君の変装だったのです。麻酔銃でベルモットを眠らせて事件解決!と思っていたのですが…

みんなで匿ったはずの、風邪の哀ちゃんがまさかの長距離徒歩で現場に駆け付けます。
飛んで火にいる夏の虫、という事で早速哀ちゃんを射殺しようとする黒の組織陣営ですが、そこでまさかの蘭ちゃんがジョディ先生の車のトランクから飛び出し、銃撃に晒されながらも哀ちゃんを守るように抱きしめます。この回でほとんど出番がなかった蘭の突然の乱入に視聴者含め全員が驚愕!
命がけで哀ちゃんを守る姿は、素直に心打たれます。身一つで銃から子供を守れることはありえず、普通なら二人とも銃殺、良くても蘭は銃殺される事必死の状況。それにもかかわらずトランクから飛び出す蘭姉ちゃんの愛が半端ない。
しかし、結果的にはこれが最適解。ベルモットが「なんでエンジェルがここに!」と焦り、カルバドスに銃撃をやめるように命令します。黒の組織でコードネーム付きのスナイパーであれば一発くらいは当てられていそうなものですが、一発もかすりもしなかったのは「え?絶対殺した方がいいじゃん」という組織としての意識と「(大好きな)ベルモットが止めてるから撃たない方がいいのか…?」という二律背反の意思の折衷案で、威嚇だったのかも…?事実はどうあれ、カルバドスは「やめろっていってるでしょ!」とキレたベルモットに銃で威嚇され、銃撃を停止します。カルバドス含め全員「え?なんで…?」と思ったはず。ベルモットは蘭ちゃんガチ勢で新一×蘭の公式カプ最推しキャラなので、蘭ちゃんは絶対に事件に巻き込んだり傷つけたりできないのです。なぜそうなったのかは、前項「工藤新一NYの事件」のwikiかネタバレ解説を見てくださいね。

待機させられていたカルバドスは赤井秀一に足を潰され、捕まることを危惧し自殺します。かなり重要なシーンで出てくるにも関わらず、爆死おじさんのテキーラよりも活躍が少なかった不憫なカルバドス。「ブラックインパクト」まで顔さえ出てきませんでした。

ベルモットはコナンくんを人質にして逃げますが、コナンくんもコナンくんで作戦を仕掛けていて、直接対決になります。
結局ベルモットには逃げられてしまいますが、哀ちゃんは諦めるという言質も取れた重要回です。

◆最後に

長くなりましたが、これだけ知っていればコナン初心者でもミステリートレインを余すことなく楽しめるはずです!!

私自身、コナンのにわかだったために、どの程度履修すればいいのか(全部が理想ですが大変すぎるので……)苦心しましたので、このレビューが少しでもお役にたてれば幸いでございます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
かつきよ

かつきよ