佐方和仁

風の谷のナウシカの佐方和仁のネタバレレビュー・内容・結末

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

風の谷のナウシカをマスクをしながら見た。

もののけ姫の祟り神でもそうだったけど怒りで我を忘れることが宮崎駿作品に繰り返し出てくるテーマ、モチーフだ。王蟲然り、ナウシカも父を殺されて怒りに我を忘れ相手の兵を5、6人殴り殺している。自分が最近すぐに些細なことにもイラつくようになってしまっているからそのシーンが気になった。

ナウシカは虫笛の音を使い虫たちの怒りをおさめる。いくつか穴が開いた小さな円筒形の笛に紐をつけて首から下げている。振り回すと風が抜けるような音が鳴って虫を落ち着かせる。
音、ナウシカは王蟲が開けた大きな洞窟のようなトンネルの中でセラミック刀を軽く叩いて振動させる、いい音、と言って聞き入るシーンもあった。
ナウシカは風を読むのがうまい。見るだけでなく、風の微妙な変化の音に耳を澄ませて読んでいる。
虫のことについてよく知らないけど音に対してすごく敏感なのだろうか?普段はとても静かに生きてるのだろうな虫たちは。王蟲も普段はとても静かな生き物なんだろう。

久石譲の音楽、ミニマルミュージック。大学で現代音楽勉強してたのを何かのテレビ番組で見たことがある。テリーライリー、シンセサイザーを使ったやつ。ミニマルミュージックは自然の自律的な生命システムを音で表したような音楽に聞こえる。
胞子が雪のように降ってくる場面、ナウシカは王蟲の目の抜け殻をかぶって心静かに時を忘れ放心したように胞子の雪を見ている。
虫や菌類、自然物に目を凝らし耳を澄ませ心を通わせるナウシカの孤独は虫たちの言葉や心に、王蟲のあの青い目に繋がっている気がする。

高原の丘のような風景、草はらがあり花々が咲いていて風が吹き、雲が下から上へ上がっていく、このモチーフも繰り返し出てくる。

傷ついた虫を虫笛を使って帰す途中、酸の海が引き潮か何かで引いて広大な遠浅の砂地になった場所に一匹の王蟲がいて、ナウシカはその王蟲と静かに沈黙して遠く向かい合う。
青い空と海と王蟲の目、ナウシカの青き衣。
佐方和仁

佐方和仁