2019年のM-1決勝ファイナルラウンド2組目、かまいたちのネタ。「ぼく、映画の『となりのトトロ』、あれ、1回も見たこともない」でお客がワッと沸いた瞬間、頭にでっかいはてなが浮かんだんですよねわたし。え?それ、そんな驚くとこ?いつから日本国民必修科目的なアレになった?いやね、確かにトトロは見たことあるけど、他のジブリはろくに知らんよ。包み隠さず打ち明けるなら金曜ロードショーでみんながバルス!言ってるときも何のことだか今ひとつよくわかってなかったし、そもそもの話としてナウシカとラピュタの区別さえついてないし、今更ながら指折り数えて確認してみたらトトロと魔女しか観たことなかった。そういう日本人も稀によく存在するんだと思うんですよ多分。そこそこレアなアレでしょうけど。
そういうわけで「令和2年現在、昭和生まれ40代にしてナウシカ初見」という化石のような存在であるところのわたくしめがいろいろあって劇場で本作を観るに至りました。理由は3つ。ひとつ、コロナの影響でたまたまジブリが長期リバイバル上映されてる。ふたつ、一連の「映画館でジブリ」がなかなか評判いいっぽい。みっつ、本日は月に一度の映画の日。感染防止対策のため座席数が少ないとは言え、純然たる新作とは異なる上映なら人が殺到することもあるまい。ってことで「遠い昔に何度か観たけど、いろいろ細部を忘れてる」という夫ともどもいざ映画館へ。
観終えて最初の第一声は「これ、もはや人じゃないじゃん。巫女とか神とかそういうアレじゃん」でした。主人公が大役を成し遂げるよりはるか手前の時点で既に、純粋にして高潔にして思慮深く母性まで兼ね備えた存在として君臨しているのを目の当たりにして「これがどう見てもティーンエイジャー未満の造形で描かれてるの、さすがに無理じゃね…?大ばば様くらい歳を重ねて経験を積んでやっと至れるかどうか、ってのがこの境地じゃね…?」という戸惑いが先に立ったわけです。それと、映画としては意外にあちこちこなれてない部分もあるのだな、という発見もありました。展開を逐一説明的なセリフに頼るところとか。
今さらですけどこれっていうのは日本アニメ界のマスターピースで、アニメを愛する人なら必ず通る道にして原点とも呼べる作品であって、その主人公たるナウシカは皆の憧れであり敬愛もしくは崇拝の対象なのですよね?きっと。それで合点がいったことと言えば「アニメファン、現実の恋愛に興味持てなくて当たり前だわ」でした。勝ち目ねえもの、生身の女に1ミリも。宮崎駿は罪深い御仁ですね。人間味あふれる人物として描かれる数少ない主要キャスト、クロトワを最も身近に感じましたよわたしは。