重大な史実を一つ。当時、本格的な演技派俳優になりたくて仕方なかったエルヴィス・プレスリーの、初出演作になりそうだったのに、マネージャーが「主演じゃないから」って断ったっていう。でも、「主演+主題歌」と「助演だけ」の中間に、「助演だけど、主題歌を歌う」っていう中間案もありえたんじゃないの? もしも本作でプレスリーが助演(三きょうだいの弟役)兼ミュージシャンとしてキャストに加わってれば、当時が『Love Me Tender』の出演前(つまり、その曲を出す前)だったことを思えば、『雨を降らす男(The Rainmaker)』の何らかの曲がLove Me Tenderよりも監獄ロックよりも先に世に出て、そうなると映画の歴史とロックンロールの歴史もひょっとしたら変わったかもしれない。何せ、プレスリーの影響力は甚大だったそうだからね。プレスリーはもしかしたら歌手人生よりも俳優人生でより輝くことになったかもしれないし、ロックの黎明期の歴史が変われば、ザ・ビートルズまで違う生まれ方になってたかもしれない。 そんなところに思いを馳せれば、この映画、世界の文化史のターニングポイントになりかけてならなかったみたいな、不思議な存在感を持つ名作ってことにやっぱりなるんだよね。