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ナイアド ~その決意は海を越える~のナーオーのレビュー・感想・評価

5.0
ジョディ・フォスターに助演女優賞を!

実在のスイマー、ダイアナ・ナイアドが現役を引退して30年後。60歳をゆうに越える高齢でキューバ沖からフロリダまでの180キロを泳いで横断した という実話を映画化した本作。監督は本作が長編映画初監督となったエリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チンのコンビ。

ロープや安全装置を一切使わずに山や絶壁を登るクライマーの姿を描いた『フリーソロ』やタイで起きたタムルアン洞窟遭難事故を描いた『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』など主にドキュメンタリー映画を監督してきた人たち。本作が初めての劇映画となった訳ですが、劇映画である本作にもドキュメンタリー映画のようは要素は多く、実際の記録映像を混ぜて描いた作風はドキュメンタリー出身ならでは。

実際の記録映像を使った劇映画ということで個人的に一番近いと思ったのは映画はロン・ハワード監督作『13人の命』です。偶然にもエリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チン監督コンビは同じタムルアン洞窟遭難事故を題材にしたドキュメンタリーを『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』を手掛けており、彼らが『13人の命』を観ていないはずがない。少なからず影響を受けていると思います。

ドキュメンタリー仕込みの演出によってキューバからフロリダまで、約180キロを泳いで渡る場面の壮絶さも凄まじいですが、ダイアナ・ナイアドの功績を讃えるというよりも、客観的に見れば欠点だらけの彼女に寄り添った作りであることが印象。ここはドキュメンタリー監督らしさ。

そして見事な俳優陣。
スポ根映画であり、シスターフッド映画でもある本作。リドリー・スコット監督作『テルマ&ルイーズ』の2人があのまま生き延びた後の姿を見ているようでした。恋人というよりも親友。お互い過去に傷を抱え、それを乗り越えようとしている戦友同士。

オスカーノミネートのアネット・ベニングも言うまでもなく素晴らしかったですが、個人的にはジョディ・フォスターが特に素晴らしかったです。あくまで主役はアネット演じるナイアドなので、ジョディ演じるコーチのボニーは決して目立たない。けれど、このボニーの視点や考え方が僕たち観客に共有され、自分勝手なナイアドとの関係を台詞だけではなく、彼女との接し方や態度によって見せる。脇役で出来ることは全てやっており、まさに"助演"とはこれ!というお手本のような名演でした。これはオスカーノミネートは納得。

残念ながらノミネートは逃したけど、一等航海士役のリス・エヴァンスの名演も光る。彼がボニーにとある秘密を打ち明ける場面は泣いてしまった…

ストーリーは王道ながら、普遍的なメッセージ、役者陣の素晴らしい演技、監督の確かな演出、見事な撮影、どこを取っても素晴らしい。Netflixオリジナル映画の中でも傑作の分類に入ること間違いなし。
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