今、こんな静かな作品を創れることが素晴らしい。
映像が美しいのは言うまでもない。
コルム・バレード監督は40代。今作が長編映画デビュー作とのこと。とても才能がある。今後も注目したい。
本作のキャストも素晴らしかった。
一昔前ならば割とよくある話かもしれない。
親戚の叔父さんと叔母さんは、ある意味、父親と母親の理想形だと感じた。
父親は
社会の規範であり、無骨でぶっきらぼうだけど逞しく、温かく包みこんでくれる存在。
母親は
いつも側に居てくれて優しく、身なりの世話をしてくれたり、料理の手伝いや掃除のコツを教えてくれる。
二人とも愛情深い。
夫婦は愛し合っている。
時にお父さん(叔父さん)は横に並び、人生について示唆を与える。
家はいつも片付いている。
背がどんどん伸びる。
コットたちと毛色の違う
お通夜に来てたおばさんの知り合い。そしてコットの両親。
おじさんとおばさんもただ親切な人たちでなく、人の心の痛みを知っている。
叔母役の女優キャリー・クロウリー。後年、ユニセフの活動で輝いていたオードリー・ヘプバーンを彷彿とさせるような気品と美しさ。
劇中、鼻に抜けるような言語、一体何語だろう?と。彼女が話すのはアイルランド語だそうだ。
全速力で走る。
沈みがちだったコットの表情が急に生き生きしだす。コットの人生が確かに動き始めた!
終わりがあるからこそ、際立つ。
このひと夏の温かみと記憶が、彼女の人生をこれからも支えてゆくだろう。