北斗星

52ヘルツのクジラたちの北斗星のネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


杉咲花が素晴らしい!
トーク番組なんかで時々見かけるが、普段はおっとりして温厚な感じだけど、こと演技になると180度変わり、とんでもない演技力を見せてくれる。彼女の華奢な体からは想像できないような力強い演技。



私が1番印象に残ったのは、安吾が浴室で自殺しているのを母親が見つけたときの杉咲花。感情を排除し、まるで人形のような大きな目でどこか虚空を見つめてる。頭をカラッポにして挑んだのだろうか。
いや、スゴい!正に、今が彼女の“旬”なんだろうな。いつの時代にもこんな女優さんが現れる。



志尊淳は顔立ちがきれいなんだけど最後まで瞳に光が当たらない。だからか目が黒く大きく、そして沈んで見える。
一体彼には何があるんだろう。
ただ、原作を読んでないせいか、彼が自殺した理由がいまいち深くは解らなかった。色々複合的な理由があるんだろうけど…。



オープニングはキコひとりしか登場しない。夜明け前。画面も暗い。寒い。痛い。



ラスト近く
普通の人々が出てくる。
最初はクジラとかなり距離があったが、ラストは近い。気候も暖かい。



キコの服装や髪型もどんどん変化していく。キコの家に塗装屋さんの彼と倍賞美津子が訪ねてきた時、それぞれのシャツのカラーがピンク、水色、白、黄色でとてもカラフルだった。多分悪い方向にはいかないだろう。
キコのショートカット、白いシャツとブルーのデニム。すごく似合ってた。ずっとポキッと折れそうな感じがする彼女が、やがてドッシリして、ちょっとやそっとじゃビクともしない大人の女性へ。

倍賞美津子さん、自然な感じでめちゃめちゃキレイだった。
余貴美子さんの空港のシーンで、少し涙が…。




クジラたちは道に迷ってた。やがてすぐ側にある明るい道に気づき歩き出す。キコは愛(いとし)をその手に引き受けて、安吾の分まで逞しく生きる決意をする。


杉咲花の瞳に光が当たり、顔が明るく輝いてる。きっと生き直せる。
一番暗い夜明け前から、最も美しい夜明けへ。クジラが元気よく跳ねた!水しぶきがかかって気持ちいい。あのクジラは安吾かも知れない。






そして忘れちゃならないのがキコの親友、美晴(小野花梨)。人を思い泣いたり笑ったり、感情豊かな彼女の存在にホッとする人も多いだろう。まさに影の立役者。



厳しい内容だけれど救いも描いてる。ラストは温かい。監督の人間讃歌と感じた。
海辺の映像がとても美しい。撮影監督は誰なんだろう。素晴らしかった!





〜〜〜

映画館には高校生のグループ(男子&女子が6人くらい)がで来てた。照れくさそうに席はどうやって座る?と話してるのが聞こえ、微笑ましい。まだまだ感性が若い彼らは何を感じたのかな。


数年前に原作を手にとって気になっていたものの、そのまま買わずにいてしまった。
杉咲花を初めて見たのは『湯を沸かすほどの熱い愛』、宮沢りえの娘役。あの体当たりの演技が今でも記憶に残っている。
北斗星

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