ヨーク

クリスマス・ブラッディ・クリスマスのヨークのレビュー・感想・評価

3.5
新宿のシネマカリテでやっている夏の映画祭、カリコレの五本目です。
タイトルが『クリスマス・ブラッディ・クリスマス』という分かりやすいもので、いやもうほんとそのまんまな内容の映画なので特にそんな何か言うような映画でもないんだけど結構面白かったですよ。サンタクロースが殺しまくるクリスマス・ホラーというのはB級…いやC級やZ級と言われる映画の中ではわりと有名なジャンルではあるが本作も何の捻りもないそのまんまな内容でしたね。安心安全の癒しさえ感じるクリスマス・ホラーだ。
あらすじもクソもない内容だけど一応本作の特徴としては殺しまくり暴れまくりのサンタクロースがAIが暴走したロボサンタということですかね。おもちゃ屋に置かれていたそのロボサンタが暴走してたまたま近くにいただけの因縁も何もない主人公が追いかけられてどんどん被害者を出しながらえらいことになっていくという映画です。
まぁロボサンタが襲ってくるみたいな映画も探せば他にありそうな気もするが、本作ではその部分が中々面白かったですね。ハッキリ言って何番煎じか分からないような『ターミネーター』のパク…いやオマージュ作品なのだが無機質的にどこまでも追いかけてくるサンタロボと、そのサンタロボがどんどん攻撃を受けながら外装がボロボロになりメカ部分が露になっていくというのが大してないであろう予算の範囲内でよく表現されていて良かったですよ。他にも血糊の量やゴア表現なんかも凄いというほどではないけどそこそこ頑張っていてえらい。基本屋内なのは仕方ないとしても低予算ホラーの割には舞台が結構変わりながら『ターミネーター』さながらの追跡劇をちゃんとやっていたのも真面目に評価してあげたいところだ。あとはアレだな、暴走ロボサンタのメイン・ウェポンが斧というのも良かったな。ロボなんだから指からマシンガンくらい出せよ! と思わなくもないのだが、斧一本でぶっ殺していく無骨な殺人鬼像は中々良かったですね。
そんな感じで中々頑張っている本作なのだが一番良かったのは主人公のお姉ちゃんが沙村広明の漫画に出てきそうな口の減らない肝の据わったメタルとB級映画が大好きで口より先に手が出るような金髪お姉ちゃんて感じで最高でした。これはもう最高だった。わりとマジで鼓田ミナレそのまんまでコミカライズできるんじゃないだろうかと思ったよ。その主人公の鼓田ミナレ(俺の中では)がレコード屋の男友達とダラダラ会話してる感じとか最高なんだよな。どう考えても尺稼ぎ以外の何物でもないのだが飲みながら音楽や映画の話してるシーンの雰囲気はすごく良かったですね。アメリカの田舎の若者とかどうせこんなもんだろう(偏見)という感じがすごくある。やることないからとりあえずセックスしとくか…くらいの投げやり感が悪い意味ではなくてあっけらかんとしたどうでもいいホラー映画とマッチングして実に、まぁこんなもんでいいか、というB級映画にぴったりな空気感になっているのだ。
そういう感じでどこを切り取っても隙のないどうでもいいホラー映画という感じでこれは好きですね。最後の方はしつこすぎて冗長感もあったが、それもまぁB級ホラーとして味わい深いものではあろう。中々良かったです。
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