コンテナ店子

ビヨンド・ユートピア 脱北のコンテナ店子のレビュー・感想・評価

3.5
 この映画の予告編を見た時から雰囲気がかなり良さそうで、けっこう期待して映画館に入りましたが、想像以上にいい映画でした。

 いいドキュメンタリーとはありのままを映して視聴者に解釈をゆだねるような作品だと思います。制作側の作為がない方がそこに現実味が増すと思いますし、インタビューをしている相手を厳選しているのが視聴者に伝わってしまうと、プロパガンダのように見えてしまって映画から気持ちが離れてしまいます。
 この映画は脱北の作戦を進める2つの家族とそれを指揮している人の様子と脱北成功者へのインタビューをメインに映していましたが、前者2つに関してもただどのようにやっているかという点や今何を感じているかという感想を聞いているだけで、こっちに特定の思想を押し付けている感じは全くしなかったです。
 インタビューについても、ほとんど自分が経験した事実だけを語っていて、北朝鮮は悪なんだというのを無理やり押し付けられている感はなかったです。なので、見て聞いて自分が考えた結果として北朝鮮への価値観を作れたので、見ていてかなり知的な感覚を味わうことが出来ました。

 この映画の冒頭に再現映像は使っていないと伝えていましたが、その結果として、視覚的に面白いようなシーンや映画としての起伏のような物はなかったですが、その分説得力がすざまじかったです。
 ドキュメンタリー映画ではあっても、映画によってはただその物事を知っている人物がただ語っているだけで、学校の授業みたいにただ言われたことを知るだけになっていることがたまにあります。でも、この映画は、そうは思わなかったです。ほんとに何も専門的な知識もない普通の人の身に起きた出来事だというのがかなり伝わってきました。

 唯一好きじゃなかったところをあげるとすると、映画の構成され方があんまりよくなかったです。2つの家族をメインに映していましたが、それがけっこうな頻度で行ったり来たりを繰り返すので、今誰の話をしているのかたまにわからなくなりました。
 特に映画の冒頭の方ではけっこう映画の中身がごっちゃになってしまうことが度々あり、少し置いてけぼりを食らいました。

 実際の北朝鮮で撮影された映像も、おそらく首都だと思われるおしゃれな所ではなく一般市民が暮らす街みたいなところであったり、国境近くの森みたいなところであったりが多く、ドキュメンタリー映画を見ているという感覚というべきか、本当に起こっていることを眺めているような感覚が一切抜けなかったです。
 結構気がめいってしまうような作品ではありますが、それでもドキュメンタリー映画好きにはかなりおすすめです。
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