コンテナ店子

哀れなるものたちのコンテナ店子のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
 ヨルゴス・ランティモスの映画はかなり好きです。「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」等も好きですが、「女王陛下のお気に入り」は傑作級に好きです。なので自然とこの映画も期待はしていました。率直な感想としてはよかったですが、期待よりはちょっとがっかりくらいな映画です。たぶん彼のことを知らずに見たら大満足だったと思いますが、あの「女王陛下のお気に入り」を作った人がこれと思うとちょっと残念です。

 前向きに行きたいので好きだったところから書くと、演技は本当に素晴らしかったです。もちろんエマ・ストーンは素晴らしかったです。フランケンシュタインみたいな人造人間っぽさをかなり不気味で独創的な表現方法で伝えていたと思います。こんな演技どこから思いついたんだと思うようなすごく奇抜な言動がすごく多く、キャラクターの設定にある意味これが合っていると感じました。
 こんなおかしな方法で納得させられたことに驚きです。
 また、ストーリーが進むにつれて彼女の演技も変化して行く様子を見るのも興味深いです。この映画は後々説明しますが、御伽噺のような本を読んでいる雰囲気が全体的にあります。だからシーン同士の時間間隔がかなりわかりにくいです。でも、彼女の演技の変化によって、どれくらい今やっていることをしているのかがかなり伝わってきました。
 他にもウィレム・デフォーの演技も好きです。エマ・ストーンに比べるとイカれてはいないですが、かなり自然な雰囲気でした。サイコパスじみた研究員という役でありながら、キチガイみたいな演技をせずにそれを表現できていて素晴らしかったです。

 演技以外だとセットデザインがいいです。この映画はおそらく近未来が舞台なのですが、今までに見たこともないような世界観でした。技術だけで言えば既視感はありますが、その装飾が御伽噺のようなファンシーさがありながらどこか不気味な雰囲気があって、この映画の主人公にはかなりマッチしていた。
 本当にエマ・ストーンのキャラクターを見る映画ではありますが、そのために世界観の全てが構築されていて、統一感があったと思います。

 一方で唯一好きじゃなかった部分が脚本です。時間の変化が演技で伝わりやすかったとは言いましたが、キャラクターが年齢的に成長しているだけで、結局この映画が何を伝えたかったのかや、主人公が経験したことの意味が何なのかと考えると少し首をかしげてしまいます。
 キャラクターは独創的ですごく興味深いですが、どうなるんだろうと思ってたらそんなに感情の変化があんまりなかったように感じます。彼の過去作はキャラクターの感情部分を強く突く作品が多かったので、そう言う意味で今作は少し残念でした。

 すごくぶっ飛んだ映画でヨルゴス・ランティモスらしいなぁと思いました。その結果として「女王陛下のお気に入り」以上に好き嫌いが出る映画でだいぶ嫌いな人の方が多そうな気はしますが、個人的には他の映画で見れないような体験が出来てすごく満足しました。変わった映画も好きな人にはお勧めです。
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