カンヌでも結構評価されたみたいな話を聞いていて、かなり期待をしてこの映画を見に行きました。率直な感想を言うと、ほんとに素晴らしかったです。「パラサイト」や「チタン」を見た時も思いましたが、やっぱりカンヌは信用出来るなと強く感じました。
無口な男の数日を追ったような映画で、ちゃんとした脚本がある訳でもなく脚本にも一貫性が全くなくて突然ある出来事が起きてそれが突拍子もなく終わるを繰り返すような映画で、ジャンルとしてはショーン・ベイカー監督の作品に近いです。
ただ、それでも主人公キャラクターの言動の端々からにじみ出る感情が本当に素晴らしく、説明どころか何もしゃべらなくても、体の動きだけで彼がどのような人間なのか、どのような半生を歩んできたのかが伝わってきました。そう言う意味でもショーン・ベイカー監督の映画とすごく似ています。
それに、主人公の演技も素晴らしいです。喜怒哀楽を細かい息遣いの変化や言動だけで伝わってくるし、時場所場合によって全然違う人間性を見せていました。無口なキャラクターだけど全くしゃべらないわけじゃなし、シーンによっては初心な反応を見せたり楽しそうにウキウキしているシーンもあったりしました。
ほんとの人間もそうです。場所であったり一緒にいる相手によって見せる感情やテンションが全然違くて当然です。ただほとんどの映画はそういう所を見ることは中々出来ないです。そう言う意味で、去年見た映画の中で最も演技しているようには見えなかったです。本当にこういう人生を生きている人間にしか見えませんでした。
本当に普通の男の数日間しかとらえていないし、説明も全然なくてただただ男が生活している様子を見ているだけの映画なのであまり多くを語るような作品ではないです。
ただ、美しく自然な世界観や素晴らしい演技は絶賛に値し、映画好きに向けた映画という感じです。みんながみんな好きになれるとは思いませんが、映画好きが好きになるタイプの映画だと思います。個人的には最高でした。
