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夜明けのすべてのsingerのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
※2/17に2回目を観てきたので、
感想を追加しました。

とても、いい作品だったと思います。
でも、観ている間は、あんまりそんな風には思っていなくて。
エンドロールが流れた、その時からゆっくりとジワジワというか。

ああ、これは映画の終わりではあるけれど、
ここから、始まってくんだなぁと、そんな思いを巡らせて。
それでいて、心は晴れやかで、優しく、温かく。
本当、いい映画を観たなぁという、そんな気持ちのまま、
観終える事が出来て、とても良かったです。

今日は公開から2日目で、上映後に舞台挨拶の配信がありました。
その配信の時間中も、ゆっくりと、この作品の余韻に心を浸しながら、
監督や、キャストの皆さんの話を聞いて過ごしました。

舞台挨拶の一幕も、とても良かったです。
撮影の裏話や、作品に対するキャスト陣の想い。
そして、サプライズで届けられた、監督からの、松村北斗さん、上白石萌音さんに宛てた手紙。
代読の方の言葉を噛み締めるように聞きながら、いい時間を過ごせたなぁと思います。
この模様は、いつかDVDやBlu-rayでソフト化される時には、特典として収録して欲しいと思ったし、映画を観た人には是非、聞いて欲しいなぁ。

舞台挨拶の中で、最後に松村北斗さんが、
「映画を観終わってから、感じた事、その思いと向き合って欲しい」と、
そう言っていた事を思い出しながら、少し思った事を綴ってみます。

人には、本当に色々あって。
それは、良くわかっているつもりだけど。
先入観や、第一印象で、その人を決めて、制限しないこと。
そして、時間と共に打ち解けて行く中に、しっかりと寄り添う姿勢を忘れないこと。
そうありたいなぁと、思ってはいても、なかなか普段は忘れてしまっている、
そんな気持ちを、作品の中から受け取る事が出来たんじゃないかなぁと思いました。

三宅唱監督。
今回の作品も素晴らしかった。
「きみの鳥はうたえる」も、「ケイコ 目を澄ませて」もそうだったけど、抑制が効いていて、わざとらしさや、過剰に感じる部分が少なく、ごくごく自然に流れ行くものを、淡々と描いているのに、そこから伝わってくるものが、確かにあって。
その演出力が、特に秀逸で、自分の肌にもよく合うなぁと、改めて実感させられました。
「ケイコ」の時に、シナリオを読んでみたいなぁと思ったんですが、掲載されている「月刊 シナリオ」誌が直ぐに売り切れて、結局買えなかったので、今回は今日、早速、シナリオが掲載された最新号を注文しました。

キャスト陣も、本当にみんな良かったです。
三宅監督の作品に登場する人物たちは、なんだか演じられているような、そんな感じが無くて、まさに、その人のようで。
松村北斗さん、上白石萌音さんをはじめ、監督の本気に、それぞれが本気で注いだ、その表現には、演技を超えたものを見た気がします。
監督、キャスト、スタッフに至るまでも、その向かう先への本気の力が、相互に高め合ったからこそ完成した、そんないい作品だったなぁと思いました。

この作品は、もう一度観に行くと思います。
シナリオも読みたいなぁと思うし、パンフレットも次に良かったら買おうかなぁと思っているので、今回の感想は、まだ未完のまま。
今は、初めて鑑賞して感じた、いい余韻の中に居たいなぁと思います。

[2024/02/17]2回目の鑑賞

「夜明けのすべて」2回目を観て。
先週、2月10日に初めて観に行ってから、1週間が経って。
シナリオの載っている「月刊シナリオ」誌も購入したので、今日、2回目を観に行ってきました。

大体、映画の2回目の鑑賞って、1回目では気づかなかった部分なんかを、再確認したり、少し角度を変えて、より深く観ていこうとしがちな部分があったりもするんですが、この作品は、あんまりそういう所が無くて。

もう、そのまま、ただもう一回観て。
先週と同じように、温かく、優しい気持ちにさせられたという。
そんな、繰り返しを実感した、2回目でした。
同じ所でグッと胸に込み上げるものがあって、
やっぱりエンドロールが凄く好きだなぁと、再確認してきたって感じです。

でも、今回はお気に入りの作品になったので、パンフレットを買って、
家に帰って、シナリオの方も読んだので、ここからは、ネタバレでは無いですが、少しシナリオと本編の違いの部分なんかも書いていこうと思います。

これから、映画本編を観ようと思われている方には、少し先入観を与えてしまうかも知れないので、その点を踏まえて、読んで頂けると有り難いです。

シナリオの方を一通り読んでみて。
やっぱり、カットされているシーンが少しあるなぁと思いました。

特に、藤沢さんと山添くんの絡みの部分で、二人の間に恋愛感情を感じさせるような、そんな台詞や、シーンは、極力入れないようにカットしたような印象がありましたね。
シナリオの方では、山添くんが過去のヨット部の活動の話をする所や、藤沢さんに、「俺のこと好きでしょ?」と問いかけるシーンが入っていたけど、映画本編ではカットされていて。

でも、逆に本編の最初と、最後にある、藤沢さんと山添くんのモノローグの部分は、シナリオには無い部分でしたが、映画本編には新たに加えられていた部分で。
このモノローグ。
特に山添くんのラストの語りは、二人の関係性を最後に、しっかりと肯定してくれるものだったので、映画の印象を左右する、大きなものだったと思うし、これを加えたのは正解だったんじゃないかなぁと思いました。

後は、芋生悠さんが演じられた千尋が、山添くんの恋人だという設定は、映画では明確にされていなかったけど、シナリオの方では、早い段階で、病院の担当医さんに、千尋が「お付き合いしている者です」と語る台詞が入っていたりしました。

そして、映画のパンフレットになっている、2人の散髪のシーン。
物語の中で、2人の距離感が定まっていく、とても大事なシーンでしたが、シナリオの中では、かなりあっさりと書かれていたので、このシーンは現場での演出や、松村北斗くんと、上白石萌音さんのアドリブが、とても生きたものになったんだなぁと感じさせられました。

映画の中で、そのほのぼのとした雰囲気が印象的だった、栗田科学のシーンも、わりとその場で、役者さんたちがアドリブでやり取りしたのかなぁと思わせる、シナリオに書かれていない台詞回しなんかもあったので、現場で息を吹き込まれたような、そんなシーンも沢山あったんだろうなぁと思いました。

パンフレットの方は、松村北斗くんと、三宅唱監督。上白石萌音さんと、原作者の瀬尾まいこさんとの対談。
そして、各登場人物の設定にも、かなり細かいものが載せられていたりしたし、栗田科学の会社案内や、歴史年表なども載っていて、映画を楽しんだ人なら、とても興味深い内容になっていたと思います。

そして、やっぱり表紙が良いですよね。
このシーン、映画を観た人なら、みんな好きなシーンのひとつだったんじゃないかなぁと思います。

後は、僕は初回に観た時から、劇伴が凄くいいなぁと思っていて。
Hi’Specが手掛けられたメインテーマが、繰り返し、作中のいい所で、効果的に鳴っているなぁというのも、印象に残りました。

映画「夜明けのすべて」。
本当に、出会えて良かったなぁと、心から感じられる作品でした。

もっと、沢山の人に観て欲しいなぁ。
そして、それぞれに想いを、感じられるといいなぁと。
そんな風に、心から思えるのが、とても嬉しかったです。
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