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仮面ライダー555(ファイズ) 20th パラダイス・リゲインドのsingerのレビュー・感想・評価

3.3
2003年の9月、僕は当時付き合っていた彼女から、突然別れを告げられた。
その恋は、人生最大の恋だったから、それは、則ち人生最大の失恋でもあった。

その年、まだ小さかった自分の甥っ子が観ていたのが、この「仮面ライダー555」だったんですよね。
この「仮面ライダー555」は、大人でも楽しめるような、メロドラマの要素や、善と悪の間で揺れ動く、登場人物たちの葛藤などが、ドラマティックに描かれていて、毎週凄くいいシーンで終わるもんだから、自分も一緒になって、毎週楽しみにしていたんですよ。

そんな、甥っ子が、ずっと欲しがっていた変身ベルトを、
失恋した事で、チョイ自暴自棄になっていた僕が、
「もう、デートでお金を使う事も無いから、買ったる!!」って、
そんな勢いで、買ってあげたこともあって。

その時の、甥っ子の喜びよう。
もう、嬉しさを通り越して、なんか恥ずかしさが勝るような、そんな表情と、
その姿は、多分一生忘れないと思います。

そして、その年に公開された、映画「パラダイス・ロスト」も、妹と甥っ子と、一緒に観に行って、その衝撃の展開に、ワアワアと盛り上がったりもした。

妹は、ホースオルフェノクを演じていた、泉政行くんにすっかりハマってて、番組の後に行われたイベントに一緒に行って、泉政行くん、村上幸平くん、溝呂木賢くん、芳賀優里亜さんの4人と、握手させて貰ったのも、とてもいい思い出だった。
でも、2015年、泉政行君が35歳の若さで亡くなったと聞いた時は、「555」が好きだった妹も、甥っ子も、自分も凄く悲しい気持ちになりました。

そんな色んな思い出のある「仮面ライダー555」が、放送から20年を記念して、新作の映画が公開されるというのを聞いて、僕はとても嬉しくて。

そして、今年の年始に、家族の集まりで会った甥っ子に、
「あ、555の映画、またやるんやってなぁ」って言ったら、
「おー、知ってる知ってる」
「え、観に行く?」
「うん、行く行く!」
と、もうトントン拍子に話が進んで。

当時はまだ3歳だった甥っ子も、もう23歳の青年になり、
自分も妹も、あれから20個、歳を取ったけれど。

あの頃と同じように、3人揃って、「555」の新作を観に行く。
そんな機会を与えてくれただけでも、もう、とてもとても嬉しかったんですよね。

観に行く道中の車の中でも、思い出話に花が咲いて。
綾野剛が出てきたりしたら熱いよなぁとか。
好きだったエピソードの話とか、ワイワイと懐かしく話ながら、劇場へと向かったのでした。

ここから、映画本編の話になりますが、少しネタバレを含みます。
これから、作品をご覧になる方は、お気をつけ下さい。

そんな、期待タップリで、観た555の新作。
冒頭から、懐かしい面々が続々と登場してきて、懐かしい気持ちになりつつ。
でも、ちょっと導入からは、強引なストーリー展開が気になったし、
人間とオルフェノクの善悪の構造を、また捻った展開に、ちょっと戸惑わされたりもして。
主人公・乾巧の立ち位置も、ちょっと微妙だったなぁ。
というか、キャラクターみんなの、その後が唐突に登場するものだから、設定をよく理解出来なかったりしたし、新キャラクターの仮面ライダーミューズを演じた、福田ルミカさんの役柄も、そこに至るバックボーンが明らかにされていないから、どうもその信念の部分が見え辛い。

誰が何と戦っているのか?

そして、その戦いや行動に向かわせる、キャラクターたちの感情が、殆ど伝わってこなかったので、途中までの展開については、かなり強引で付いて行けないような、そんな印象がありました。

でも、クライマックスから、ラストはとても良かったなぁ。
あの頃と同じ興奮。
そして、カッコ良い555の姿を、またスクリーンで体験出来たのは、とても嬉しかったです。
もう、最高に痺れたなぁ。

個人的には。
やっぱり、ホースオルフェノクだけでも、何らかの形で登場して欲しかったなぁと思ったし、ファイズ、カイザ、デルタが揃っての、共闘も見たかったなぁとは思ったけど、何より、映画館でまた、あの頃と同じように、ファイズの活躍が見れただけでも、とても満足でした。

映画の後。
もう、23歳の甥っ子が、
「やっぱ、555、カッコ良かったなぁ」と言っていて、
「俺、ちょっと、あのベルト買いたくなったわー」って、
あの、3万円以上もする、ファイズギアのCOMPLETE SELECTIONを本気で探してみる気になったようで。

それを聞いて、嬉しかった。
何年経っても、ヒーローへの想いは変わらないんだなって。
そして、そんな変わらない想いを、あの頃から、一緒に体験する事が出来て、
本当に良かったなぁって、素直に思えました。
でも、甥っ子の心残りは、最後はブラスターフォームが見たかったみたい。
確かに、僕もオリジナルのアクセルフォームが好きだったので、これは見たかった。

後、琢磨くん。
当時もちょっとネタキャラっぽかったけど、いい味出してたから見たかったし、
ジェイとか、ラッキークローバーが勢揃いしたりしたら、それはまた熱かっただろうなぁとか。
え、北崎君出すんなら、ドラゴンオルフェノクは見たいよなぁとか。
バイクもサイドバッシャーと、ジェットスライガーも見たかったよねぇと、言い出したらキリがなく。

でも、20年経っても。
僕らは、今でも555が好きなんだなぁと。
そんな事を、改めて確認しあえたという、思い出に残る一日となりしました。

日曜日の映画館。
思ったより盛況だったけど、観に来てたのは、みんな大人ばかりで、子供が全然居なかったのも、驚きでした。
みんなも、ずっと555が好きなんだなぁ。

そういう、心に残るもの。
ひとつだけでも、残してあげたいなぁ。
そして、自分もまた心に刻んで行きたいなぁと、そんな風に思いつつ、
20年ぶりに、ファイズを観て、感じました。

(The)end justiφ’s the mean
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