今年のベスト候補になりそうな作品に出会えた！三宅唱監督『夜明けのすべて』。
やさしくて、でも押し付けがましくなくて、それぞれが生きる場所があることを丁寧に映し出す作品。本当に素晴らしかった。
主役2人、上白石萌音さんと松村北斗さんの演技も、声も、佇まいも、すべてがキャラクターの生き方や背負うものをふまえたものになっていて、名演。助演の皆さんも光石研さんをはじめ、全員が作品の世界観を見事に作り上げている。
各自が背負うものがつらく悲しいのだけど、それに対してきっといつまでも泣きたい気分だと思うんだけど、だからこそ他者のことも受け入れられるやさしさ。深入りはしないけど、ちゃんと居場所を提供してくれる空気感。
映画としての表現も素晴らしく、2人が心を通わせるきっかけになる社用車のワゴンの洗車場面。カメラさえもガラス越しに、やさしい眼差しでやり取りを捉えるところに感動した。バチっと決めすぎないけども、画でそのシーンの感情や出来事を描写する演出が巧い。エンドロールに至るまで巧すぎる。フィルムの質感もカッコつけじゃなく、作品にぴったりハマっている。
