マヒロ

ヴァチカンのエクソシストのマヒロのレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
3.0
(2024.28)
ローマ教皇から直々に命を受け“主席祓魔師”として働くアモルト神父(ラッセル・クロウ)は、スペインへ向かうよう命じられる。そこでは亡き夫の遺志を継ぎ古い修道院の修繕をするジュリアとその娘のエイミー、息子のヘンリーが暮らしていたが、発掘作業中の事故をきっかけにヘンリーは悪魔に取り憑かれており様子がおかしくなっていた。助けに来た地元の神父エスキベルを超常現象で一蹴した悪魔は、駆けつけたアモルト神父をも翻弄する強力な悪魔だった……というお話。

公開時、日本のプロレス好きのプロデューサーさん(ジェフ・カッツという方みたい)がTwitterでめちゃくちゃ日本人向けにアピールしてくれていた作品で気になってはいたんだけど、アマプラに来てようやく観られた。
ラッセル・クロウが悪魔祓いということで、鉄拳制裁で悪魔をねじ伏せるみたいな話なのかと思っていたが、『エクソシスト』のクライマックスである悪魔祓いのシーンを全編に亘ってたっぷり描いたような形で、意外にも真っ当なエクソシズムもの。ラストは悪魔との超能力バトルみたいになったりするが、割と地に足ついた作風で、良くも悪くも堅実な作品だと思った。肩書きに似合わずちょっとお茶目なアモルト神父は、でっかい身体で小さいスクーターに乗って移動する様とかがキュートで良いし、地元の神父であるトマス神父も、最初はただの噛ませ犬かと思いきや劇中で急成長を遂げてアモルトの相棒にまでなるなど大活躍で、この二人のキャラクターはかなり良かった。続編の匂わせみたいなものもあったが、確かに色々な悪魔を祓いに行く神父の冒険ものとか結構面白そうではある。

悪魔の被害に遭う家族は早くに父を亡くしたことによりギクシャクしており、そこが何か物語に関わってくるのかと思っていたら、それほど掘り下げもないまま家族はフェードアウトしてしまうのが気になった。本題は神父と悪魔の対決にあるのは分かるんだけど、捨てられた修道院を蘇らせようとしていた亡き父とか、そんな父の死から喋れなくなってしまった息子とか、序盤で語られる何か意味ありげな設定が結局何の意味もないというのがどうもバランス悪いような。
後、チラッと触れられるくらいだが、悪魔の悪行を探っていく中で「異端審問も悪魔に唆された結果だ」みたいなことを言ってたのも気になるところ。人間の負の歴史を悪魔のせいだとしてしまうのはなんか前時代的な価値観だなと感じる。

思ったよりシリアスな作風で、悪魔祓いという題材を茶化さず真面目に描いていたのは良かったんだけど、もう一つ何かトガった良さを期待してしまったところはあった。
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