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12日の殺人のsymaxのレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.7
"警察というのは、男が犯した事件を男が調べる…奇妙なところだ…"

10月12日深夜…21歳の女性クララが殺された…ガゾリンをかけられた生きたまま燃やされたのだ…

捜査を担ったのは、班長になったばかりのヨアン警部…次々と捜査線上にあがる男達は、皆怪しく、それぞれクララを殺害する理由があるも決め手に掛け、逮捕するには至らず、何時しか事件は未解決事件として世間から忘れ去られていく…

"悪なき殺人"を作ったドミニク・モル監督の最新作は、実際に起こった未解決事件をベースにしたサスペンス…いや、未解決事件に翻弄される刑事達を通じて、閉鎖的な現代社会の歪みを描いたような閉塞感たっぷりの人間ドラマでありました。

緻密な捜査で事件の手掛かりを見つけ、解決に導くという爽快なストーリー展開ではなく、ヨアンがオーバルコースをひたすら自転車で回るように、刑事達もひたすらぐるぐると事件の縁を回っているように見え、出口の無い出口を探し、事件の沼にはまり込み、自らの生活も破綻していく姿は辛い…

容疑者として上がる男どもは、皆クズ…捜査する刑事ですら、被害者の事を貶める言葉を発するクズ…やるせない雰囲気が作品全体に漂い、男女差別に代表される社会の歪みを見せつけてられているようで…ドミニク・モル監督の手腕を堪能致しました。

内容が内容だけに、モヤモヤ感は決して晴れる事はありませんが、遂にオーバルコースを飛び出し、峠を自転車で挑むヨアンの姿に唯一、救いを感じる良い終わり方だったのでは?と思ったのでした…
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