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ハンテッド 狩られる夜のsymaxのレビュー・感想・評価

ハンテッド 狩られる夜(2023年製作の映画)
3.6
"GODISNOWHERE"

一発の銃弾がアリスの腕を貫く…続く激痛…

そこは、人里離れたガソリンスタンド…しかも深夜…不倫相手との密会後、不妊治療をする為に夫が待つ我が家へと急ぐアリスだったが突然のガス欠により立ち寄っただけなのだった…

アリスを送ってくれていた不倫相手の同僚ジョンは呆気なく銃弾に倒れ、ただ一人ガソリンスタンドの売店に取り残されるアリス…

突然響き渡るトランシーバーからの声に必死に助けを求めるアリスであったが…

"友達が撃たれたの…"
"それは気の毒に…俺が頭をぶち抜いた…"

アレキサンドル・アジャ製作×フランク・カルフン監督の黄金コンビが作り上げた本作は、実に尖ったワンシチュエーション・スリラーとなっていました。

あんまり評判良くないし、やってる劇場少ないしと半ば鑑賞を諦めていたところ、思いの外仕事が早く終わり、ポッカリ時間が空いたので、じゃあ観ましょうかっというコトで鑑賞…私は、この二人とは相性が良いみたいで、結構面白かったですよ。

登場人物への共感を拒絶し、観客を突き放す冷たさには痺れました。

やたらと腕の良いサイコなスナイパーである犯人の謎さ加減が素晴らしく…まぁ、よく喋る喋る…犯人本人が言うように、妻の不倫を知った夫が仕掛けた復讐なのか、はたまた単なる狙撃犯なのか謎は最後まで明かさず…知るはずの無いアリスの事を妙に詳しく知っていたりと謎が謎を呼ぶ展開は流石のアジャ、ともすると単調になりがちなストーリーを上手くまとめているのでは?

犯人とトランシーバーを介して会話をしていく毎に、その深い心の闇を露わにしていくアリス…このアリスのクズっぷりも本作の魅力の一つではないでしょうか?

狩る側と狩られる側との駆け引きが緊張感たっぷりに描かれております。

開き直り?とも思えるアリスの覚醒が、後半にじわじわと効いてくるのです…

何とも言えぬ余韻を残し物語が終わる時…ふと気がついたあの看板…

狩る者、狩られる者、そして観ている私達にとって、あの看板から放たれた銃弾の意味するところとは…

"GOD IS NOW HERE(神はここにいる)"

"GOD IS NOWHERE(神はどこにもいない)"

…どちらに見えるというのであろうか…
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