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旅するローマ教皇のギルドのレビュー・感想・評価

旅するローマ教皇(2022年製作の映画)
3.9
【歩く教典の沈黙にある理由】
■あらすじ
ドキュメンタリーの名匠ジャンフランコ・ロージ監督最新作では、ローマ教皇の真の姿に迫る。2013年から9年間、37回の旅、53か国を訪れた教皇の旅の膨大な記録映像と、これまで圧倒的な映像美により世界を切り取ってきた監督による撮りおろし映像を交えながら紡いだ新たなドキュメンタリーの傑作が誕生した。貧困、紛争などさまざまな問題を抱える世界の片隅で生活する市井の人々の姿が教皇の旅を通して描き出される。2023年秋全国順次公開予定。

■みどころ
800時間のフィルムアーカイブ映像を基にフランシスコ教皇が世界各地へ赴き、現地の人々と接するドキュメンタリー映画。
フランシスコ教皇は主に貧困な地域、宗教的にかつて問題になった地域、戦争の爪痕が色濃く残る地域などを中心に旅をしていく。
フランシスコ教皇が赴く場所と場所の合間には戦争・貧困・武器の驚異のシークエンスが挿入され、フランシスコ教皇の時系列と逆行する形で問題点が関所のように存在する。

語る内容は一貫しており、教皇の佇まいが歩く教典のように映す。
人々に語る姿→世界の問題のシークエンス→次の目的地へ赴くフランシスコ教皇→人々に語る姿
…という一定のルーティンが繰り広げられ、その流れで共通して見えるのが「沈黙」である。

印象的なのは「沈黙」に多種多様な意味を内包している所であり、教皇が出先の人々の悲しさ・怒りを吸収し、発信したり神へ祈る事で強調される沈黙に深く複雑な想いが込められているのだ。
過去を想う沈黙、今取り組むべきと熟考する沈黙、実情の非情さに嘆く沈黙…など多種多様であり、事象の問題点は世界各地を順繰りで循環する事に嘆き自問する形で帰結する。
その佇まいに圧倒された佳作でした!

日本公開されますので、気になる方は是非鑑賞を!
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