シムザスカイウォーカー

きっと、それは愛じゃないのシムザスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

きっと、それは愛じゃない(2022年製作の映画)
3.9
異なるルーツを持つゾーイとカズが、宗教や慣習の違いに戸惑いながらも心を開いてゆく姿に勇気をもらえた!恋愛だけじゃなくて、家族に対しても!

個人的には閉じて殻に閉じこもった一年だったので、周りの人との向き合い方について色々と思うところがありました。

今作は、脚本のジェミマ・カーン自身がパキスタン男性との結婚により、パキスタンへ移住。活気に溢れた魅力的なパキスタンで生活していくなかで、愛へのアプローチの違いに気付き探求していったことを元に制作されている。

この映画を観るまでは、私も見合い結婚なんて古臭いと思っていたけれど、確かに自分を良く知る人物が勧めた相手の方が冷静に見極めてくれるような気もする。

人には現実的なアドバイスができるのに、自分のこととなると都合良く解釈したり、明らかに不幸になると分かってる相手でも選びがちだよね。笑

私はマッチングアプリを利用したことがないけれど、周りの友人たちがゾーイと同じように恋愛迷子になる様子を見てきたので現代女性のリアルなんだろう。(余談だけれど、マチアプの既婚男性利用率の高さはなんなんでしょうね…。)

"生涯続く愛は、静かに煮てから沸騰させる"

脚本家のカーンの友人のこの言葉が刺さる。
盲目的に燃え上がることがイコール愛なのかと言ったら違うだろうし、結婚生活は決断の連続だから冷静じゃないと続けられない。

日本だと恋愛感情ベースで結婚するけれど、カズは「家族のために正しいことをしたい」という思いから見合い結婚を選ぶ。私が家族関係の希薄な家庭に育ったからかもしれないけれど、まず家族の中での自分の立ち位置みたいなものを常々考えていることが驚きだった。家族のために何ができるか?が自分が幸福になることより優先度が高く、家族の期待に応えた先に自分が幸福になることができるという考えなのだ。

"イギリスの離婚率は56%だが、お見合い結婚だと6%まで落ちる"

カズがゾーイに見合い結婚を選んだ理由を説明するシーンで出てきた言葉。一見、見合い結婚こそが幸福な結婚生活を保証する道のようにも思えたけれど、カズもマイムーナも"家族のために"と当初は離婚を選ばなかった。そもそも離婚のハードルが高いことを考えると、離婚率なんてものは単純に幸福度を図る指標にはならない。

反対にゾーイは、独り身の母が"娘にひとりでいてほしくない"と願う気持ちに寄り添えずに言い合いになってしまう。劇中で一番感情移入してしまったのはこのシーンかもしれない。

自分でも上手くいかない理由が分からず、かといって親にどうこう言われる歳でもなく、情けなさで焦りは増すばかり。

独身でいることで不完全な存在というか、半人前扱いされることってあるけれど、1人で自立した生活を送っていることのどこが半人前なんだろうと思うよ。

そして言及しておきたいのは、この映画は見合い結婚も恋愛結婚も否定していないってこと。幸せへの道は人それぞれ。

ゾーイは誰にも偽りなく心を開いて行動したから幸せへの道が開けた。こうあるべきとかしがらみや先入観を捨て去り、人と関わろうと努力し続けることが大切なんだと教えてくれた映画でした。