シムザスカイウォーカー

バベットの晩餐会のシムザスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
4.0
画面越しなのに料理の温かさや、香りが伝わってくるようで、観終わった後お腹が空いた!笑

小さな村だろうから、普通ならよそ者のバベットには厳しいのではと想像するけれど"姉妹がバベットを受け入れたなら"と暖かく迎え入れたのではないかと思う。

若い頃はその美貌だけで寄り付く男たちがいたが、質素で慎ましやかに暮らし、村人たちを励まし助けていたからこそ周囲の理解が得られたんだろうな。描かれていないところに、姉妹の人生の厚みを感じるね。

バベットは住み込み始めた当初に姉妹に教えられた料理を覚え、14年間過ごしてきた。料理人として慣れ親しんだ料理を出さなかったのは、勿論、材料が揃わないこともあったろうけれど、姉妹への敬意の表れだったのかもしれない。バベットの我慢強さや村や姉妹への思いが感じられる。

宝くじで1万フランという大金を得たバベット。
1万フランておいくらなんでしょう?と思いググったら、もしや同じ映画観ましたか?というくらいピンポイントで『19世紀後半の1万フランは日本円でいくらですか?』と知恵袋に質問されている方がいました。笑

回答は今の価値に換算して3800万円くらいとのこと。
晩餐会に参加した11人と、御者のおじさん1人で12名だから、1人あたり316万円くらいでしょうか。営業の癖でついつい野暮なことを考えてしまいました。

食べたことのない食材たちを前に、何か得体の知れない不味いものでも食べさせられるのでは!?と不安がる姉妹と、不味い料理が出てきても平気なフリをしてバベットの気遣いを蔑ろにしないようにしようという村人たちが、可愛らしくて可笑しくてこそばゆい。

フランス料理のマナーを知らない村人たちが、将軍の食べ方を見て真似しながら、バベットの振る舞う豪勢なフランス料理に導かれてゆく。なんとも幸せそうな顔にこちらの顔も思わず緩む。

確かに、フランス料理には海ガメを使うこともあるのかと驚いたし、ウズラのパイのビジュアルはなかなかショッキングである。将軍がウズラの頭を齧る姿に眉を顰めるのも理解できるけれど、うっとりする表情を見ると食べてみたくなるね。クグロフに洋酒?を浸したデザートも、美味しそうだった。

バベットは厨房にずっといるのに、食べる人の反応が見えるかのように手伝いの少年に指示を出す姿が一流の料理人らしくかっこよかった。

子どもの頃は気付かなかったけれど、大人数で食卓を囲むってとても豊かな時間だよね。核家族化や地域との繋がりが希薄な現代では、大人数で食卓を囲む機会も少ないし。食事で人を幸せにするって素敵。温かく美味しい料理でお腹が満たされると、自然と心まで暖かくなるんだね。

「天国には自分が人に与えたものしか持っていけない」

この言葉が1番記憶に残っている。姉妹もバベットも天国に行ってもきっと豊かに暮らせる。

前半パートは寒々しい描写が多く、天気が登場人物たちの心情を表しているようだった。バベットの料理が土砂降りの寒空から満点の星空へ導いていた。

追記)他の人のレビューを見ていると、マーチーネとローレス、フィリパとパパンが恋愛関係だったという認識のようで驚く。男性たちが一方的に恋慕を寄せていただけで、姉妹は迷惑そうにすら見えた。歌の練習中、フィリパは眉間に皺寄せてたし、おでこにキスされた直後に「歌の練習をやめたいの」と吐露するし。父の反対もあって恋が終わったみたいな書き方の人とか同じ映画を観たとは思えぬ………