シムザスカイウォーカー

ザ・クリエイター/創造者のシムザスカイウォーカーのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ギャレス・エドワーズ監督が休暇中にアイオワまでドライブ旅をしている道中、日本語の工場看板を見かけたことからインスピレーションを膨らませて作られたという今作。

同じ風景を見たとしても、世の中の大半の人間はこれだけ壮大な物語を創造できない。物語の壮大さもさることながら、天才の想像力に圧倒されるエピソードだ。

Chat GPTが一般的にも使われるようになった昨今、シンギュラリティが起きるのも目前!私たちは危機に瀕すのでは!?と警戒する声もあるけれど、ギャレス監督はAIロボットの登場を恐らく好意的に考えている。

私が今までに観た映画では、AIロボットは「人間殺そうとする悪い奴」「良い奴に見せかけて悪い奴」ばかりだったけれど、人間の思考をベースにしているなら、この映画に出てくるシュミラントたちのように、思いやりのあるロボットが多くても不思議ではないよね。

少なくとも日本を含むアジアの多くの国ではアニミズムの考え方が広く浸透しているために、AIロボットに魂が宿り、優しい心を持つことにあまり抵抗感も持たずに受け入れられる気がする。その点でも、ニューアジアがシュミラントと共存している描写は受け入れ易い。

敵対するアメリカは、シュミラントが核爆発を起こした原因だからとシュミラントを廃絶するために邪魔する者は人間であろうと躊躇なく殺してゆく。主義主張のためならば、人を殺してもいいのか?本当に怖いのはAIじゃなくて、不安や恐怖に支配された人間ではないのか?と思った。

真相は人間のミスで引き起こされた事故であったし、ミスするのはやはり人間。そして廃絶しなければならないのは核の方だ。

延命治療を受けていたマヤを生かし続けるシュミラント僧侶が「私たちは人間を殺すようにはプログラムされていない」と言っていたし、人間と共存すると考えたときに当然"人を殺さない"はプログラムに組み込むだろう。

そして、輪廻転生の観点からは延命治療は現世に縛りつけていて、別の形で生まれ変わるのを阻止しているという視点が仏教的。献血感覚でAIを生成するため生体情報を寄付するという設定もあり得る話かもしれない。

シュミラントの後頭部のヴィジュアルや、死後にメモリを差し替えれば数十秒だけ生き返るという設定もツボだった。

正直、鑑賞前はスターウォーズの監督と知って身構えていたのだけど(最後まで観られたことがないので…)とても面白かった!!