世間の流行りに迎合できないことなんて山ほどある。
本作は、黒人社会の現実と乖離して、ステレオタイプな黒人像を世に出し続けるエンタメ業界に嫌気を指し、不満を覚えていた売れない黒人小説家が、酔った勢いで嫌っていたステレオタイプの作品を書き上げ、密かに発表してしまうという、かなり入り組んだプロットなお話。
前置きの長いプロットもそうなのですが、アメリカの黒人社会をリアルに感じたことはないので、そこまで入り込める作品ではありませんでした。この作品に於ける“リアル”と“フィクション”の境目も、あまりよく分からなかったですし、ゲイはともかく、コカインの使用は黒人のステレオタイプそのものだと感じてしまいました。
最後のオチも“フィクション”を強調したかったのだと思うのですが、結局は煮え切らなさが残る形に…
しかし作品としては、家族との物語や自分のアイデンティティについて丁寧に表現されており、それはそれで一本筋が通っていたお話だと思います。それと最近のアメリカエンタメ界のポリコレ化に嫌気を指していたところなので、その現状に一石を投じたという意味でも、有意義な作品だったのではないかと…
何はともあれ、アカデミー賞の結果が楽しみですね。
