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ハロルド・フライのまさかの旅立ちのsinginggizmoのレビュー・感想・評価

4.0
ある日ハロルド爺さんに、かつて一緒に働いていた同僚の女性クイーニーから手紙が届く。
末期のガンを患い死が近いと。
ハロルド爺さんは、簡単な返事を書いて手紙を出そうとするが、なかなか投函できない。
どうやら、この女性に特別な思いがあるよう。
とあるきっかけで、病気の彼女に希望を与えるために歩いて会いに行く!と突然思い立ち、そのまま約800kmを歩き出す。

はじめは、ハロルドとクイーニーの関係性がわからないし、老体に鞭打ってまで歩いて行く理由がわからない。

徒歩の旅が進むうちに、ハロルドの過去やクイーニーになぜそんなに強い思いがあるのか、明らかになる。
それがあまりに壮絶で、そりゃ800km歩くよ…と納得。
なんだか、ほわっとした雰囲気のハロルド爺さんだったけど、凄まじい罪の意識と後悔に向き合うために歩いていたんだとわかると、涙がぼろぼろ溢れて止まらない。
隣で観てたおじさんも、すんげー泣いてた。

クイーニーについては多くは語られないけど、あまりに献身的すぎる行動に、ハロルドを助けたいと思わせるくらい、彼女のなかにも後悔や罪の意識があったのかなと想像させる。

途中でノラ犬が付いてくるんだけど、ただ画的にかわいいだけでなく、ハロルドにとって犬が必要な理由がある。
わんちゃんは最後までハロルドの旅に付き添わず、終盤で「もう大丈夫でしょ?」と言わんばかりに、他に自分を必要としている人間のもとへ走り去る。
達観したような、くたびれた感じの表情がたまらないわんちゃん。

人生のハードな一面を語っている反面、ハロルドを演じるジム・ブロードベントの佇まいや、イギリスの風景がかわいらしかったり、コメディ要素もあるので、笑いと涙のバランスがよい。

旅の先で得られるもの、というより、旅自体に意味があったんだと思う。
彼が歩きながら自分の過去に向き合う姿に、爽やかな気持ちになって癒される。
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