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女王陛下の007のtjZeroのレビュー・感想・評価

女王陛下の007(1969年製作の映画)
4.4
シリーズ6作目、最大の問題作の登場です。
その”問題点”とは…
①歴代ボンド役者の中で唯一、1作のみで降板したジョージ・レーゼンビーが主演。
②(なんと)そのボンドがスカートをはく!
③シリーズで最も暗~いエンディング。
…ただし、こうしたマイナス面もじっくりと味わうと長所に変わっていきます。

①については、本作だけで降りてしまったのがもったいない位の暴れっぷりです。長い手足を器用に動かして、ダイナミックなアクションを披露。元々シリーズ諸作のB班(アクション場面)の演出や編集を手がけてきたピーター・ハントがメガホンをとっているため、相性もキレも良い動きを見せてくれています。スタントをほとんど使っていないのも好印象。

②については、今回の原作が”伝統”や”正統性”に重きを置いた物語であるため、紋章学者に扮した007がパーティーの正装としてスコットランドの伝統礼服であるキルトのスカートを身につけるのは正しいマナーなのです。
これが他のボンド役者、ショーン・コネリーやダニエル・クレイグだとグロテスクだったでしょうが、レーゼンビーにはあまり違和感がありません。その意味でも、適役だったと言えましょう。

③については、重みのあるタイトルと共に、本作のメインテーマが”大英帝国の公僕である007が、任務と個人的な恋愛模様との葛藤に引き裂かれる”というドラマティックなものであるゆえ、あの結末は必然なのです。

その結果、シリーズらしい無邪気な楽しさは欠けるものの、一本の映画として高い完成度を誇っています。
そのせいか、ファンの間では人気の高い作品。ボンドマニアであるクリストファー・ノーラン監督も『インセプション』の中で本作にオマージュを捧げています。あの”第3層”の雪山アクションは本作とソックリなのです。
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