『クラシカルな愛憎サスペンス×エゲツないヘッジファンド現代劇。クロエ・ドモント、堂々たるデビュー作』
映画を観る醍醐味のひとつに、自分とは異なる世界や立場の住人が辿るドラマを追体験する、というものがある。
ワクワクするような冒険も、焦がれてしまうロマンスはもちろん…
悲劇や狂気というのもまた蜜の味だ。
自分は安全圏にいながら、神の視点でそれをのぞき見る。
その愉悦も自分にとっては映画の醍醐味である。
そして、本作はそんな愉悦をヒリヒリするまでに味わわせてくれる一作だった。
男と女(現代においても本作については強く言える)が辿る愛憎入り交じるセクシュアル・サスペンス。
美しき愛と狂気のカタチを、映画はどれほど描いてきただろうか。
クロエ・ドモントは長編デビュー作で、その古典に挑む。
ドラマシリーズ【ブリジャートン家】を観ていない自分にとって、”女側”のフィービー・ディネヴァーは初めて注目したが、本作を押し上げるだけの美貌と演技であった。
しかし、武器はそれだけではない。
日本においては、ほとんどの人がその実態を知らぬであろう、アメリカ大手ヘッジファンドの内部…
その「毎日が天国か地獄かの戦場」を生々しく描くと同時に、男女のサスペンスにゴリっとかけ合わせてくるのだ。
今この戦場(職場)で、男女はそれぞれどんな思惑を抱き、何をしようとしているのか。
その主導権(成功か転落か、まさに命がけ)にどちらが手をかけているのか。
クラシカルかつ現代で作られるべきサスペンス映画が、ちゃんとここにあった。
怒涛のサスペンス展開に、もはやホラーの領域にまで踏み込む終盤まで、ヒリヒリを楽しんで味わうことができる。
もちろん、その”間”の使い方や演出、展開も極上とは言い難いのだが、デビュー作としては十分ではなかろうか。
男女・カップルで一緒に観るのは、あまりオススメしないが、
観た人同士で、随所に散りばめられた男女の愛憎入り乱れる様をどう感じたか語り合うのは楽しいだろう。
にしても、どの国でも情報商材ってやつは…人の公私をどこまでもしゃぶりつくす一番の”狂材”だよなぁ。
▼邦題:Fair Play/フェアプレー
▼原題:Fair Play
▼採点:★★★★★★☆☆☆☆
▼上映時間:113min
▼鑑賞方法:#Netflix ( #ネットフリックス )