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ゴジラ-1.0のシネマノのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8
『"シン"の後…東宝の威信を託された山崎貴だからこそ誕生した、戦後と現代がリンクするゴジラ vs 市民の物語』

日本・東宝が世界に誇るゴジラシリーズの最新作を、もちろん劇場で鑑賞。

昭和~平成~ミレニアムを経て、
12年ぶりの新作という期待を背負いながら、エポックメイキング的な傑作となった【シン・ゴジラ】(16)。
その後を託された山崎貴監督のプレッシャーは、どれほどのものであったろうか。

しかし

「いつか、自分に話はくると思っていた」と語る監督には、VFXを駆使した日本映画を牽引してきた実績がある。
そして本作も彼でしか作り得ないものに仕上がっており、自分は十分にゴジラ映画のスペクタクルに興奮を覚え、楽しむことができた。

「ゴジラ」「特撮」「戦争」「特攻」…
こうしたワードには常にあらゆる意見が飛び交い、一度でも自分のステートメントを出したなら最後、どうあがいても賛否が荒れるように飛び交うものだ。
事実、【永遠の0】(13)に監督としてかかわった山崎監督を、作品(本作含めて)を観ずにキャンセルする意見も多く見られる。
自分は幸いそうした意見を持たず、作品を楽しむ立場のため、映画として感じたことを書くに終始するが、本来はそうであってほしいと思っている。

軍人にとって、生きる(生き残る)ことを是としなかった戦時の日本。
生き延びて明日の未来を築くことに必死だった、戦後の日本。
日本という大きなうねりのなかで、常に市民はそれぞれの戦いを強いられてきた。

”生き残ってしまったのに、自分は生きていていいのか”
"生き残り、命託されたからには、絶対に生き延びなければ”

相反する極限状態のふたりのドラマが中心に据えられており、しっかりと見応えあるものになっていた。

そして、「昭和」「大戦」をテーマにした作品に数多く携わってきた山崎監督が込めたテーマ。
・死に向かうことを美徳とせず、這ってでも生きて抗うこと
・国、政府が機能せずとも市民が試練に立ち向かうこと
そうしたことへのエールは何も難しく考えることはなく、多くの人にとって心にくるものがあるものなのではないだろうか。

見応えのあるドラマパートも添えられつつ、真骨頂であるゴジラの登場パートは大迫力だ。
これだけの映像作品を生み出せる日本映画すげぇ…
ゴジラ、荒々しくて神々しくてかっけぇ…
そんな単純なオモシロさも全編にわたって溢れていた。

・掴みから【ジュラシック・パーク】シリーズに比肩するゴジラパニック
・クソボロ木造船「新生丸」&採れたて機雷 vs ゴジラ
・【ダンケルク】(17)リスペクトな燃える展開
・ロマンが爆発する「震電」の躍動

「つつける欠陥を探してケチをつけるなんて野暮でしょう!」な、
笑って泣いて、ハラハラ・ドキドキできるポイントも数多い一作。
総じて、"シン"の後に生み出されたゴジラ映画の新作として、十分に楽しめるだろう。

にしたって、庵野監督→山崎監督の後にどんなゴジラ映画があるってんだ…

あと、本編前の予告で流れた【あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。】(12月8日公開)。
まだ、このテーマを堂々とこする新作映画あるのか…って辟易してしまった。
原作はあるとして、定期的に若い子たちに伝えていくって方針でもあるのかな。
少なくとも、本作の予告編に併せて流すものではないし、本作のドラマだけでもいかに視座が優れているかが浮き彫りになる。
(楽しみにしている方、本当にごめんなさい)

▼邦題:ゴジラ-1.0
▼英題:GODZILLA MINUS ONE
▼採点:★★★★★★★☆☆☆
▼上映時間:125min
▼鑑賞方法:映画館鑑賞
▼鑑賞劇場:T・ジョイ PRINCE品川
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