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愛なのにのシネマノのレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
3.4
『愛なのに、愛だから、愛なんて。面倒くさいし、分からない。それでも人は…城定秀夫×今泉力哉で贈る"真っ裸な愛の物語”』

とても良かった【アンダーカレント】(23)で、今泉力哉への熱が再び。
彼が脚本を手掛け、城定秀夫が監督を務めた本作を、遅ればせながら鑑賞。
お互いの良さがしっかりと込められた、観ているこちらまで心を真っ裸にされるような愛のドラマを楽しめる一作だった。

かつての実らなかった恋と相手を忘れられずにいる、古書店の若きオーナー
そんな古書店の若きオーナーに恋する女子高生
そんな女子高生に熱いほどの想いを寄せる男子高生
そして、古書店の若きオーナーに忘れじの恋を植えたまま、結婚準備を進める女性
そんな女性のパートナーであり一緒に結婚準備を進める男性
結婚準備を進める男性と関係を持っている、ウェディングプランナーの女性

今泉力哉にとってお得意ともいえる、片想いの連鎖が紡ぐドラマはここでも健在だ。
そこに本作では、城定秀夫監督による、文字通り”真っ裸な性愛”が付加される。
恋と愛、それぞれのキャラクターが本能のまま、心のままに相手を想い行動することで、めくるめくドラマが繰り広げられる。

だからこそ、観ているこちらの心にも真っ直ぐに届くものがある。
時に嫌悪や不快を感じるかもしれない。
時に共感や羞恥が湧き上がるかもしれない。
それら含めて、本作が持つ映画としてのおもしろさや魅力が十分に伝わってきた。

愛なのに、伝わらない、認められない、拒絶される
愛だから、諦めたくない、忘れられない、大事にしたい
愛なんて、厄介で面倒、いくつになっても分からない

考えれば考えるほど、愛って未知である。
でも、未知なる愛は、考えずとも湧き上がってくる。
そして、愛によって、人は孤独から少し遠のき、心に直接あたたかさを感じ、日々はたしかに色鮮やかになる。

心がぐるぐる、ぐにゃぐにゃ、身体は泣いて笑って、結局「愛」は何をもたらし、何を変えてゆくのか。
それぞれの行動、経験、手紙、ペアのマグカップ…
見えないもの、分からないものが、日常のなかで少し見える瞬間がこの映画には映し出されていた。

本作はキャストも魅力的。
主人公の瀬戸康史は、いい年のとり方してるし、演技の幅が広がったなぁ、としみじみ。
ドラマ【À Table!〜歴史のレシピを作ってたべる〜】で初めて注目したが、中島歩のナチュラル演技は本作でも健在。
最近、どんどんその魅力にハマっている河合優実も、本作を観る理由にしていいほど、大きな見どころ。

すでに今泉力哉からしか摂取できない養分が確立されつつあるが、少し大人向けの本作にもたっぷりであった。

▼邦題:愛なのに
▼採点:★★★★★★☆☆☆☆
▼上映時間:107min
▼鑑賞方法:ストリーミング鑑賞(U-NEXT)
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