現実社会にある闇が、うっすらと怖くなってくるような映画だった。
結婚を決めた相手が姿を消し、調べてみると、知らなかったことがわかってくる。
というのは、ミステリーとして上手い。
市子とは誰なのか、彼女に何が起こったのか。
過去に彼女と関わった人たちの証言から、少しずつ事実が明らかになっていく。
そして彼女が望んでいたことも見えてくる。
ただ、普通に生きたい。
市子の願いはたったそれだけなのに、それを許してくれない現実社会の闇がある。
闇は個人ではどうにもしようがないのもので、そう考えると、どうにもやりきれない気持ちになる。
ほとんど救いのないこの物語を、杉咲花が繊細な演技で引っ張っていくのが見事。
恋人役の若葉竜也、同級生役の森永悠希、友達役の中田青渚もよかった。
個人的には、母親役の中村ゆりが光っていると感じた。
すれっからしの美女役が不思議と合っているし、なにより彼女が演じていることで、母親が元凶だということを意識させない。
これは配役の妙であるとも思う。
嫌な雰囲気全開だし、後味よくないし、救いはないし、観ていて心地いい映画ではない。
ただ、時系列を入り混ぜた展開と、周りから市子を浮かび上がらせるのは、物語としてとても面白かった。
惜しいのは、結局のところ、ある一点に謎が集約してしまうところか。
僕はそこにミステリーとしての魅力をあんまり感じられなかったけど、そこが響く人には相当に面白い映画なんじゃないだろうか。
