リュック・ベッソンの怪作!!
『マラヴィータ』、『ルーシー』、『ヴァレリアン』『アナ』など最近は当たり外れが多く、女性に対してのセクハラ疑惑などのスキャンダルで干され気味だったリュック・ベッソン。個人的に『レオン』や『ニキータ』もみんなが言うほど好きじゃない… 特にベッソンのロリコン節が全開の『レオン 完全版』は面白さよりも気持ち悪さの方が勝ってしまって、好きか嫌いかで言えばハッキリ嫌いです…
とはいえ、そんなリュック・ベッソンが原点回帰的にダークなアクション映画を作って、ヴェネチア映画祭で絶賛されていると聞いて、え?あのベッソンがヴェネチア映画祭に⁈と驚きました。
確かに、長いキャリアのリュック・ベッソン監督作として本作『ドッグマン』は完全に新境地。久しぶりにリュック・ベッソンの本気を感じる映画でした。
ただし、これまでの監督作と比べると寓話的というか、シンプルなアクション映画を期待している人は肩透かしを喰らうかも。テーマとしてはリュック・ベッソンがミラ・ジョヴォヴィッチ主演で映画化した『ジャンヌ・ダルク』を思い出す。
"私は神を信じているけど、神は私を信じているのか?"という信仰と苦難。
不遇に満ちた人生。そんな人生を耐えて生きる男の話であり、日本ではダークヒーロー映画と宣伝されていますが… そんな映画ではございません。
ドッグマンvsギャング、普通ならそこをメインにしたアクション映画を作るはず。でも本作はそのバイオレンスな部分もかなり控えめ。アクションもオマケ程度にあるだけで、恐らくリュック・ベッソンはアクション映画ではなく、ドッグマンという男の人生を描いたドラマを作りたかったんだ思います。
なので観終わるとアクション映画を観た感よりも『フォレスト・ガンプ』のような一人の人間の人生についての映画を観たという感の方が強かったです。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの好演も良かったですが、本作はワンちゃんたちが凄すぎる。パンフレットには登場するワンちゃんの名前や犬種まで紹介されており、犬好き必見パンフレットでした。
リュック・ベッソン監督作としては良い意味でかなり変な映画で、近年の監督作としてはベスト。
ただ苦言や不満もあるにはあります…
一部のレビューでもっとダークヒーロー、もっとジョーカーっぽさが欲しかったとありますが、僕は逆にジョーカー感がバリバリ過ぎなのが残念だった。特に後半は主人公ドッグマンが紫のスーツを着るという場面があり、あからさまなオマージュで少し萎えました。リュック・ベッソンはこの映画を作るにあたって、間違いなくトッド・フィリップスの『ジョーカー』やクリストファー・ノーランの『ダークナイト』を参考にしていると思いますが、あまりにも影響を受けすぎてる笑
あと単純にチグハグな脚本も気になりました。
ドッグマンの人生を描くにあたって、様々な人達が本作には登場しますが、基本的にドッグマン以外人物の掘り下げがほぼなかったのが残念。虐待されながら育った子供時代、施設に保護されてそこで出会った女性への切ない恋など一つ一つのエピソードはとても良かっただけに、もっと掘り下げて欲しかった。特にドラァグクイーンとして初めて自分の存在が認められ、居場所が見つかったエピソードは感動的なだけに、凄く勿体無い。
でも保険調査員のエピソードはばっさりカットして良いと思う…
などなど欠点はあるにはあるけど、リュック・ベッソン監督作としては重要な一本になると思います。クリストフ・ヴァルツ主演にドラキュラを題材にした次回作も楽しみです。