"この《52ヘルツの鯨》の鳴き声は高すぎて、他の鯨たちには聴こえない…世界で一番孤独な鯨って言われているんだ…"
きなこには、その声なき声が聴こえた…実母から"ムシ"と呼ばれるその少年の声が…
かつて家族に苦しめられた過去を持つきなこは、その少年を見過ごすことができなかったのだ…
かつて…愛するが故に家族に呪われたきなこの声を聴き、きなこを救った安さん…安さんと過ごしたかけがえのない日々に想いを馳せ、まるで過去の自分のようなその少年のたった一つの願いを叶えようと…
原作は未読、かなり評判が良かったので鑑賞…
出だしから辛いシーンの連続で、かなり重い…
杉咲花の熱演もあって、要所要所で容赦なく泣いてしまった…
虐待、ヤングケアラー、DV…ちょっと詰め込み過ぎな感がない訳ではありませんが、コレだけの内容を上手くまとめたと思います。
題名が示す通り、きなこだけでなく、登場人物のいずれも声にならないSOSをあげていたのではないでしょうか?
きなこを愛しているといいながら、結局は暴力に走ってしまう…母親しかり、恋人しかり…この二人もまた"52ヘルツのクジラ"なのですね…
そして、それは作品を観ている私たちにも当てはまることなのかもしれません…
幸運にもきなこの心の叫びは、安さんに届き、安さんに救われたきなこですが…安さんの声はきなこには聴こえなかった…
だからこそ、きなこは"ムシ"くんを無視出来なかったのかもしれません。
それにしても、きなこの恋人主税を演じた宮沢氷魚は、お父さんソックリになってきましたね。