ラウぺ

レザボア・ドッグス デジタルリマスター版のラウぺのレビュー・感想・評価

4.3
犯罪組織の元締めジョーは宝石卸の店に研磨済みのダイヤが入荷するという情報を聞きつけ、これを強奪する計画を立てる。息子のエディの他に6人の実行役を集め、ダイナーで朝食をとってから現場に向かうが・・・

最早説明不要な、クエンティン・タランティーノ監督初作品。
ビデオでは何度も観ていますが、今回劇場初鑑賞。
いい頃合いに細部を忘れていて、他の誰とも違う物語運びの妙味をじっくり堪能できます。

冒頭のダイナーでの朝食の場面。
「ライク・ア・バージン」の歌詞を巡る下ネタ全開のアホらしい会話、ジョーの古い手帳を茶化すミスター・ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)、チップを払いたくないと持論を展開するミスター・ピンク(スティーヴ・ブシェミ)、これから強盗に向かう気配が微塵も感じられない空気にまったくどうでもいいくだらない会話が延々と続く、後の作品でも頻出するタランティーノらしいスタイルですが、手練れの監督・脚本家でもまずやらない手法でありながら、初監督でこれを冒頭からはじめてしまうタランティーノはまさに異能の人というに相応しい。
それに続くダイナーからクルマに乗るために歩き出す場面に被るタイトルロールのカッコよさは一回観たら目に焼き付く強烈な印象を残します。

それから時系列を行き来しながら起きている事態を徐々に明かしていく物語運び、意外な場面の挿入などで定石を敢えて外すタランティーノらしいスタイルがずっと続く。
強盗事件なのに強盗場面がまったく登場しない強盗映画というのもそうですが、輪郭を徐々に説明して描いていない事象を観客に理解させる手際の良さ、唐突に挿入されるバイオレンス描写、一見ダラダラとした会話の中にそのキャラクターらしさが滲むことで作品の中にちゃんと意味を見出せる展開(そもそもそのダラダラした会話自体が最高に楽しい)等々・・・そのスジのマニアなら蘊蓄を語るだけで永久に会話が続けられるのではないかと思いますが、他の作品にも共通して見られるこうしたタランティーノらしさは既にこの作品から完成の域に達していて驚嘆せざるを得ません。

もう一つタランティーノらしさといえるのが、キャラクターを惜しげもなく殺す意外性というか、大抵の登場人物は映画の最後までに死ぬ、この滅びの美学ともいうべき特徴は、キャラクターを最初から死ぬべく登場させているというか、殺すために劇中で“生かして”いる、というところでしょう。
初見での印象はバイオレンス描写がキツくてなんじゃこの人は!?と思った印象がありましたが、まあなんというか、このスタイルに慣れてしまえば、そこもまた楽しみの一つといったところ。
暴行を始める場面でのミスター・ブロンド(マイケル・マドセン)の喜々とした様子はタランティーノの趣味がリミットレスに表れたところかと思いますが、なんだかタランティーノはこうでなくちゃ、と思わせるのです。

やはり、タランティーノは異能の人だと確信を深めるのでした。
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