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カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~のumisodachiのレビュー・感想・評価

3.9


児童文学作家である角野栄子に密着したドキュメンタリー。Eテレで放送されていたものを映画にまとめて上映。

88歳になる角野栄子は、鎌倉のカラフルな家で執筆活動をしながら、娘や友人や近所の人々と楽しく交流して暮らしている。1本書き上げたら眼鏡を買って、執筆作業が終わったら御成通りや海岸を散歩して。ときには遠くまで友人に会いに出かけたりもする。

私も実家が湘南にありあのあたりで育ったので、ただ景色を見ているだけで楽しかった。とてもじゃないが88歳には見えない角野栄子は常にケタケタと笑っていて、スクリーンはいつでもハッピーオーラに満ちている。客席も可愛いおばあちゃんで埋まっていて、複数人でウキウキ観に来ているおばあちゃんグループもいた。

ブラジルで暮らしていたことや、その頃親しくしていた少年(デビュー作のモデルとなった人物)と数十年ぶりに再会したことなどドラマチックな要素もあれど、全体的にはエッセイ調で「ただ繋ぎました」というタイプのドキュメンタリー。ことさら盛り上がる要素もあまりないし、角野栄子本人もいたって穏やかで普通の人物なれど全く飽きないのは、彼女の人生が豊かだからなのだろう。

『ミッション・ジョイ』の2人もそうだったが、とにかくよく笑う。それもニコっという笑いではなく、大爆笑。ゲラゲラ笑っている瞬間が非常に多いのが印象的だった。もしかしたら、人生を豊かに過ごすコツってこれかもなと思うほどに。

というのも、この2本の映画を観た数日後に『徹子の部屋』を見ていた時に同じことを感じたのだ。研ナオコと梅沢冨美男が出ていたのだが、仕事をしながら流し見していた私の手が思わず止まるほど、黒柳徹子が大爆笑したシーンがあった。研ナオコのすっぴん写真を見て「こんなに酷いすっぴん見たことない」と、呼吸が止まるんじゃないかというほど爆笑するという失礼極まりない(笑)状況だったのだが、黒柳徹子の年齢でここまで笑えるってすごいなあと、ちょっと感動してしまった。

息が止まるほど大爆笑できる感性とエネルギーを保つことが長生きの秘訣なのかもしれない。『ミッション・ジョイ』も『カラフルな魔女』も『徹子の部屋』も、気心知れた人間同士がお互いに軽口を叩きあって大爆笑していたわけで、30年後、40年後に私もああなっていたいなあと羨ましくなるほど楽しそうだった。

あと、先ほど「ただ繋ぎました」というタイプのドキュメンタリーだとは言ったものの、角野氏に対して最大限の敬意と気遣いを感じる内容だったことには素直に賛辞を送りたい。彼女が触れてほしくないことにはおそらくまったく触れておらず、あくまでも対象者を尊重しているのが強く感じられた。今度、実家に戻ったら角野氏と遭遇してみたいなあ。そうしたら声かけてみるんだ!


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